| Home |
2008.05.06
となりのウチナーンチュ 〜早見裕司

ところは浦添の牧港あたり。1階にスーパーマーケットがある鉄筋アパートの4階に住む新垣彩華は、ビンボーなために高校にも通えない15歳。快活で他人に頼らないところがあり、多少サーダカ(霊感が強い)のようで、聴こえないものが聴こえたり、見えないものが見えたりします。
父の勇は、直木賞作家を夢見て毎日泡盛を飲みながら役に立たない原稿を書いているフリーライター。故あって妻と別れ、実家からも縁を切られてしまっています。
そんな父娘のとなりに東京から引っ越してきたのが、鈴木父娘。
我がままな母親への恐れと難しい友達づきあいのためにすっかり学校が嫌いになり、友達なんかいらないと思っている夏海と、沖縄大好きの和則です。
夏海は、あっけらかんとした彩華の行動や、同じアパートに住むというだけで分け隔てない付き合いがはじまっていく沖縄の不思議な雰囲気に触れ、徐々に心を開いていきます。
その途上には、恐い母の生き霊を彩華とともに追い払ったり、夏海を東京に連れ帰ろうと台風のさなかにやってきた本物の母をアパートの住人たちが結束して本土へ追い返したりと、さまざまな山場があります。
ラストシーンは、宜野湾のトロピカルビーチ。
「沖縄そばってどんな感じ?」と、夏海が問えば、
「食べやすいよ。見てからのお楽しみ」と、彩華が答えます。
「そばを食べなければウチナーンチュとは言えないさ」
「もう勇よー。夏海はウチナーンチュではないってば」
「うん。でも、ウチナーンチュがやるようなことは、だいたいやってみたいの。できることだったら」
「じゃ、まずは、そばさーね」
「でもさ、夏海」
「何?」
「いいんだよ。自分がウチナーンチュだ、って思っても」
―――そのとき夏海は、心の底からうれしそうな顔をしたのでした。
ウチナーグチのイントネーションまでが読み手に伝わってきそうな、不思議と温かさがいっぱい詰まった「ゆるみ系ホラー」小説。サイコーです。
| Home |


