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 2017年中に読んだ沖縄関係本の50冊目。
 「風車祭(カジマヤー)」「テンペスト」「トロイメライ」「統ばる島」などに続く前作(「黙示録」2013年)から4年ぶりとなる、632ページの大著。沖縄からボリビアに移民する者たちの物語であり、デビュー23年にして初めて沖縄戦を取りあげた作品。
 過去1年間に最も面白いと評価されたエンターテインメント小説に贈られる山田風太郎賞(主催・角川文化振興財団など)の2017年の受賞作です。
 著者は2015年、ボリビアの沖縄県人移住地「コロニアオキナワ」へ渡って取材し、物語を構想。選考委員の京極夏彦は、「圧倒的なスケール感と情報量をさばく巧みさ、小説としての深みがずばぬけていた」と評価したとのことです。

 筆致はいかにも池上永一。主人公はパワフルで超人性を遺憾なく発揮しているし、場面展開が速くて目が回るようだし、沖縄特有の「マブイ」も大活躍。たしかにエンターテインメントとしては優れていると感じるものの、ストーリーが多元的で、それについていくのに多少の苦労が必要です。それでも、厚さのわりにはどんどん読み進めることができました。

 ウェブ上にあった末國善己(文芸評論家)の書評が適切だったので、以下に引用しておきます。

・沖縄からボリビアへ、魂の奔走
 故郷の沖縄を描き続けている著者の4年ぶりの新作は、第2次大戦後に沖縄県人が南米のボリビアに移民した知られざる歴史を題材にした壮大な物語である。
 沖縄戦を生き抜いた少女・知花煉は、過酷な経験によってマブイを落としてしまう。戦後の闇市で成功した煉だが、表に立てた男が共産主義者だったことからアメリカ陸軍の諜報部に追われる身となる。ボリビアへ逃走した煉を待ち受けていたのは、農地とは名ばかりの原生林だった。
 重労働に加え、大河の氾濫や疫病が移民を苦しめるが、煉は、女子プロレスラーのカルメン、日系3世のイノウエ兄弟の協力もありしたたかに世を渡っていく。転んでもただでは起きないパワフルな煉には、読者も勇気がもらえるだろう。
 だが米軍諜報部は追及を諦めておらず、煉は生活を守るため、親米派と反米派が争い、ナチスの残党が暗躍する南米で政治がらみの危険な仕事を請け負う。その頃、煉から分離したマブイは革命家のゲバラと恋仲になっていて、煉の本体もキューバ危機へと向かう激動の渦に巻き込まれる。
 南米文学のマジックリアリズムの手法を取り入れてきた著者が、冷戦下の南米を舞台に選んだだけに、歴史小説、幻想譚、国際謀略小説などの要素が詰め込まれ、面白さも増している。
 ソ連に備えるため米軍基地が増強された沖縄を離れた煉だが、一種の棄民として沖縄県人が送られた南米は、冷戦の最前線だった。この展開は、日本の戦後復興が、二重三重に沖縄の犠牲の上に成り立っていた事実に気付かせてくれる。
 沖縄戦でマブイを落とした煉は、戦争を嫌い、ゲバラの武力革命にも懐疑的だった。そのため煉は、マブイを戻して自分の中の戦争を終わらせ、平和をもたらすために奔走する。この終盤が感動的なだけに、ハッピーエンドを拒み、沖縄の怨念が決して過去の問題ではないと突き付けるラストには、衝撃を受けるはずだ。

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