光人社の戦記シリーズNF文庫の1冊です。
 表題こそ「沖縄」となっていますが、全5編のうち沖縄関係は「あゝ沖縄“武器なき兵士の島”最後の日」の1編のみで、海軍軍需部に理事生として従軍した砂岡秀三郎氏の手記です。
 ほかの4編もいずれも従軍者の手記ですが、その地は沖縄とは関係なく、「八丈「鉄壁の陣」始末」(八丈島)、「金鯱城が炎上した日」(名古屋)、「本土防空レーダー連隊奮戦始末」(東京)、「志布志湾「決戦場」に敵艦影を見ず」(鹿児島)となっています。
 自分は戦記物がきらいではないのでそう苦にはなりませんが、沖縄戦そのもののことが知りたくてこの本を手にした人はさぞかし鼻白んだことでしょう。

 さてその沖縄に関する1編ですが、昭和20年3月23日の黎明のことから始まって、同年6月26日、疲れ果てて空き家で寝入っていたところを米兵に見つかって捕虜になるまでの出来事を、一人の従軍者の視点で淡々と記されています。
 公式の記録もまとまっていて興味深いものがありますが、このような「多くの人のうちの一人」が動き、考え、苦悩した様子を知ることも、戦争というものの本質を知る上で極めて重要であり、真実性の強いものであると思います。

 日本兵についての、逃げ、欺き、強奪し、強要し、恫喝する様子があちこちに垣間見られ、また、読んでいて胸が悪くなるような死臭、雨、ガマの湿気、着弾、大怪我、人々の叫びなどが生々しく伝えられています。

 「戦場とは不思議なところだ。枕がなくても、すわっていても、ずぶぬれになっていてもすぐ眠れる。戦争にはぜいたくな病気がない。「死ぬ」という恐怖もない。ひまがあればどこでもすぐ眠れる。眠りこそは戦場の恐怖をわすれるただ一つの避難所だったのだ。」(本文より)

 いつもながら、「散華された世代への熱き思い入れ」を源に「その記録を誌して平和の礎とし、後世に伝えんとする」との巻末のNF文庫刊行のことばには泣かされます。
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://kakateyapo.blog68.fc2.com/tb.php/1087-0c916cf5