FC2ブログ


 ボーダーインクが発行する聞き書き・島の生活誌のシリーズ7冊のうちの5冊目。
 単純に聞き書きしたことを概ねそのまま掲載しているのですが、これがたいへんに味があるのです。一言一言が重いというか、意味が込められているというか。このシリーズを読むのは「田んぼの恵み 八重山のくらし」に続いて2冊目ですが、こういう本って好きだなぁ。なんか、じいちゃんの昔語りを聞いているようで…。

 有人島としては日本最南端にあたる八重山諸島の中でも、与那国島と石垣島が舞台。
 全6章。第1章は、4人の子どもを女手ひとつで育てるなか、当時女性が手にすることがなかったサンシンを周囲の偏見にもめげず習得し、与那国島の歌を記録して楽譜に残した苦労を語ります。
 第2章は、その娘さんが忙しい母を助けて小学生の頃から畑や料理にと活躍した話。
 第3章は、与那国島で在来米を作っていた頃の暮らしが描かれています。
 第4章は、八重山の生物学と民俗学の先駆者である岩崎卓爾とともに働いた正木任(つとむ)氏の後を継いで気象台に勤務したその息子、正木譲さんの経験と思いが語られます。
 第5章は、八重山の人々の生活の最古の資料である「朝鮮王朝実録」にある1477年の済州島漂流民の記録を紹介するとともに、この時の人間的な交流についての記憶が、500年以上の歳月を超えて生き生きと伝承されてきたことを伝えます。
 第6章では、石垣島に舞台を移して、馬が大好きで歌にあふれていた農民のくらしが語られます。

 いつの間にか、調査する者とされる者という壁が取り払われていくようでもあり、物資が乏しい戦後の復興期を、身の回りの自然を最大限活用して、なんでも自分たちでやりながら力強く生きてきたさまざまな知恵が、なんだかとてつもない未来への宝物のように感じられます。
 それは、失われていくものに対する、落日への哀愁である、とも言えるでしょう。しかし、読んでいて、それだけではない口惜しさや喪失感が、ぐいぐいと伝わってきますから、不思議です。
 いったいおれたち現代人は、どこに向かって進もうとしているのでしょうね…。
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://kakateyapo.blog68.fc2.com/tb.php/1079-3715345d