「日本一の長寿バンド「白百合クラブ」の半世紀」と副題の付く、2003年発刊の本です。
 映画「ナビィの恋」や「ホテル・ハイビスカス」の監督・中江裕司がはじめての書き下ろしたノンフィクションです。

 終戦直後の石垣島白保で、若者たちが集まって結成された楽団「白百合クラブ」。手には、ひょうたんで作ったマンドリンに、桑の木をくりぬいたバイオリン。ラジオも電気もない時代、彼らが奏でるあたらしい音楽と、可憐な舞踊に、島の人々は熱狂した。……それから57年、なんと、平均年齢70歳の白百合クラブはいまも活動を続けている!
 彼らにすっかり心を奪われ、ドキュメンタリー映画を撮った著者が、語りつくせぬ彼らの魅力と、知られざる57年の足跡を書き下ろし。メンバーインタビューや、2002年のTHE BOOMとの東京公演の模様などの写真も多数収録。宮沢和史(THE BOOM)による、白百合クラブに捧げる詩も初掲載。
 ――という内容。

 映画を撮るほうが先でしたが、それでは彼らの魅力を語り尽くせないとばかりに書かれたもので、2002年10月、鶯谷の「東京キネマ倶楽部」で行われた東京公演の様子とその写真、映画完成後に新たに取材したメンバーインタビューなどにより構成されています。
 歌われるのは、クラブのテーマソングである「ぼくらのクラブ」に始まって、「港横浜花売娘」、「満州娘」、「ロンドンの街角で」、「白保の十九の春」、「さよなら港」、「桑港のチャイナタウン」「長崎のザボン売り」、「さらばラバウル」、「ミルク節~ヤーラーヨー」など。踊りも入って、すごいものです。
 映画「白百合クラブ東京へ行く」のDVDも一緒に買って観ましたが、本と合わせて観ることによって、白百合クラブメンバーの人生をしみじみ味わうことができてなかなかよかったです。

 底抜けの笑顔はなぜだろう。
 沖縄の戦後は、混乱のなか、辛いことの連続であった。
 しかし、沖縄の人たちは、辛ければ辛いほど、明るく楽しそうにしているように見えた。
 写真で見た白百合クラブの人達の笑顔に、沖縄の戦後が集約された姿を見た。
 白百合クラブだって、楽しいことばかりじゃなかったはずだ。なのにあの底抜けの笑顔はなぜだ。
 この謎を解くためにも、私は白百合クラブに出演を依頼した。(本文より)

 メンバーのうち、会長の西玉得浩は石垣市内でスーパーを営む。(現在は閉店) 大島勇は最年少メンバー(1942年生まれ)。屋号がヒバリ、つまりは大島保克の父ということ。白百合クラブの最盛期に入団したものの病気で活動を休止していた新良幸永は、新良幸人の父です。
 白保というところは音楽の血が脈々と受け継がれている不思議な地なのですね。
 映画が撮られてからすでに14年が過ぎましたが、あの元気でにこやかなメンバーたちはその後どうしているのだろうなぁ。

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 南の島の絶景に触れてしまうと、これらを知らないで暮らしていたそれまでのモノトーンの人生はいったい何だったのだろうと思ってしまう心境――、というのはすごくよくわかります。南の島で人生を変えたい、人生をやり直したいと、自分も思ったものです。

 で、この本。
 いったいどこからが「日本の南の島」なのか?
 それは北緯29度付近にある「渡瀬線」(奄美群島の北部付近)より南だと考え、その「見えない不思議な壁」を突破し、かつての琉球王朝の歴史に触れていきます。
 取り上げられる島々は、著者自らが仕事に私事に300回以上足を運んだ中から、選びに選んだ26島で構成されています。
 それらは登場順(=五十音順)に、阿嘉島、粟国島、奄美大島、波照間島、伊江島、伊平屋島、伊良部島、西表島、石垣島、伊是名島、加計呂麻島、喜界島、久米島、黒島、水納島(多良間村)、水納島(本部町)、宮古島、沖縄島、下地島、竹富島、多良間島、渡嘉敷島、渡名喜島、与那国島、与論島、座間味島。
 おおっ、大部分は自分も渡島していますね。これらのうちまだ行っていないのは喜界島、水納島(多良間村)、多良間島の3島だけです。喜界島は宿まで取ってあったのに荒天のために飛行機が飛ばず行けなかったことがあり、多良間周辺は未踏なのです。行かんとなあ、これらにも。

 ページを開くと、南国特有のまばゆいばかりの写真がたっぷり。それらだけでも心がとろけていくようで、こうなると文字はいりませんね。(笑)
 その200点以上の写真は、すべて著者の撮りおろしなのだそう。ドローンで撮影した島全体のショットが満載なのも特徴です。
 各島について、リード文と地図イラスト、短めの本文、島の基本情報があり、あとは写真がバーン! 飽かず眺めてしまいます。

 本シリーズはほかにもヨーロッパ編、アジア編があり、シリーズのキャッチコピーは「人生に必要なのは、iPhoneと勇気とサムマネー!」。
 近年、沖縄でプチリタイア生活をする人も増えているようです。人によってはこの本が、人生を変えるキッカケになってしまうこともあるかもしれませんから、読むに当たってはドウゾお気をつけて。(笑)



 第40回(2014年度)新沖縄文学賞受賞作。
 中沢けい、又吉栄喜、山里勝己が審査員となり、3人がこの作品をもめることなく一致して受賞作に選んだそうです。
 沖縄文学賞とは、沖縄タイムス社が1975年に創設した賞で、これまでの受賞者には又吉栄喜、崎山多美、目取真俊、照井裕、水無月慧子なども名を連ねています。

 著者は、1969年埼玉県生まれ。北海道大学農学部を卒業後、十勝毎日新聞、八重山毎日新聞を経て、2016年からフリー。石垣島をはじめとする沖縄と台湾の関係を中心に取材を続けて、著書に「八重山の台湾人」、「与那国台湾往来記」などがあります。ああ、フリーになったのですね。島旅メーリングリストのメンバーでしたよね。

 ビル管理会社でエレベーターを監視するケイは、ひょんなことからマンションの住人の「おばちゃん」と親しくなり、ルームメイトのユミとともに「神様のところ」へ向かい・・・という、いかにも沖縄っぽいストーリー。
 那覇市内を舞台に、現代風の若い女性二人と都市の集合住宅に孤独に生きる台湾出身の老女が織りなす複雑な多文化世界を描いています。

 台湾の巻き尺の「魯班尺(ろはんじゃく)」がストーリーのキーアイテム。それには数字の列と平行して二字熟語が書かれており、赤い文字はおめでたい言葉、黒い文字は恐ろしい言葉になっているもののよう。
 「おばあちゃんの部屋のドアには、内側に巻尺のようなものが張ってあり、玄関の靴脱ぎのところに立つと身長が測れるようになっていた。おばあちゃんは私の身長を確かめて、部屋に入ってよしと判断したわけだ。・・・」(本文から)

 会話も今風で軽妙、沖縄おばぁのマイペースも健在。さあ、物語はどう展開していくのか?! この続きはぜひ本を買って読んでみてください。
 新書版120ページほどの薄い本。沖縄タイムス社が新沖縄文学賞受賞作を多くの人に読んでもらうために創設したのであろう、「タイムス文芸叢書」の700円。全国の書店では手に入りにくいのが玉に瑕でしょうか。



 一風変わったタイトルの2010年発行の沖縄関係小説を、古書市場から安く買ってみました。著者も知りません。
 ヒントは、販売サイトの解説に書かれていた次のような文章のみ。
 「昭和初期、世界恐慌時に一時不振に陥った日本の石炭産業は、満州事変以降、戦争への傾斜を強める帝国日本の国策下、軍需の拡大から再び活況を取り戻す。
 日本の最南端の採掘場として西表島のジャングルに埋もれる炭鉱も、坑夫1,200名を擁する規模に発展した。
 そこで坑夫として働いていた中には詐欺同然に連れてこられた者も少なくない。南洋の緑の楽園と信じてやってきた者を待ち受けていたのは、果てしない強制労働とマラリア、奴隷のような生活だった。戦時には小学四、五年生が採掘に従事した記録さえある。
 そうした歴史を踏まえて書かれたこの物語は、無間地獄の底から命懸けで脱出をはかる少年たちの冒険譚である。
 西表では逃走者・脱走者のことを「ピンギヌム」と呼んだ。悲劇の運命にあらがい、生きる道を探った少年たちの決死の脱出は成功するのか!?」
 また、
 「地獄の採掘現場、密林のジャングル、マラリアの死窟で、少年たちは―。
 西表島―東西30キロ、南北20キロの八重山諸島最大の島に、この物語の主人公の家族が渡ってきたのは太平洋戦争への傾斜が深まった昭和14年の春のこと。近代国家をめざす帝国政府が第一の国策事業として推進した炭鉱開発の真っ只中であった。主人公の少年たちは死と絶望だけの闇が広がる無間の底へと落とされた…。」

 ははあ、つまりは、西表島にかつてあったという炭鉱を舞台にした冒険・アクション小説だな。だったら面白そうじゃん。――ということで。(笑)

 それにしても、これを書いた人物は1950年東京生まれといいますから、西表島の炭鉱とは関係がなさそうだし、年齢的にも当事者にはなりえません。いったいどのような経緯があって、このような内容の書をものしようと考えたのでしょうか。
 その著者は、巻末の略歴を見ると、歌手、画家、馬券師などを経て、1986年から小説を書き始め、95年に作家デビューを果たしたという変わり種のよう。
 近隣に西表炭鉱経験者の子孫がいたりするのかもしれません。多くの参考文献を読み、歴史的にも破綻なくまとめられているようです。

 毎年秋、恒例となっている「琉球フェスティバル東京」を観てきました。
 東京開催は今年で22回目。開催概要は、次のとおり。
  10月1日(日)東京・日比谷野外大音楽堂  開演16:00 ※雨天決行
  出演:古謝美佐子/我如古より子/パーシャクラブ/よなは徹バンド/桑江知子
     THE SAKISHIMA meeting(新良幸人×下地イサム)
     琉球オールスターズ(徳原清文・よなは徹・仲宗根創・大湾三瑠・浜川恵子)
  司会:ガレッジセール



 前日から東京に泊まり、夜、そして当日の朝にも居酒屋をはしごして、日中埼玉県の川越まで足をのばして「小江戸」の風情を眺め、15時半前に会場へ。7,500円の当日券を買って入場です。
 客の入りは、ほぼ満員ですが、後ろのほうには空席があり、毎回後方で全体を俯瞰する格好で見ていますが、今年は周りがスタンディングになっても座ったままで前が見える程度です。

 主催者のM&Iカンパニーによれば、今回のキーワードは「組み合わせの妙」と「女流」の2つだというのですが、はたしてどんな感じなのでしょうか。
 15時40分、いつものように東京沖縄県人会のエイサーでスタートし、15時55分にガレッジセールの二人とテレ朝の久保田直子アナが登場。5分余りしゃべって、定刻16時、いよいよ開幕です。

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 トップバッターは、ザ・砂かけババア(ゴリ談)こと、古謝美佐子。
 ハデハデの胴衣(どぅじん)、裙子(かかん)風の姿で登場。脇を固めるのは夫でもある佐原一哉、そして「琉神」のエイサー太鼓です。
 披露した曲は「アメイジング・グレイス」、「国頭サバクイ」、「童神」、「ナークニー~カイサレー」の4曲。
 美佐子独特のハリのある声が相変わらず冴えわたります。「国頭サバクイ」などは迫力さえ感じるぐらい。しかし63歳ともなると、やや息継ぎの一瞬あたりに微妙な衰えを感じないわけにはいきません。
 また、佐原の奏でるシンセサイザーの音が割れ気味で、金属音のような音が耳に響いたのがやや残念でした。
 美佐子はガレッジらと砂かけ合戦をしながら楽屋へ。おもしろいおばさんです。

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 2番手は、新良幸人と下地イサムによるTHE SAKISHIMA meeting。
 まずは、ミャークフツが入るテンポの速い曲。なんていう曲? 下地のギター掻き鳴らしと新良のスタッカートの入った三線がいい。歌詞に「ニヌファーマイ」とか入っていたようだけど、不明。
 続いて、幸人が「二人で書いたマグロの歌を聴いてくれ!」とアピールして歌い始めたものも、沖縄民謡という感じではないような曲だけど、不明。最近聴き込んでいないからなあ。
 3曲目は「Jingo~夏至南風(カーチバイ)」。77の口説調の歌詞と、♪ササッ、ササッ、舞い遊ば ササッ、ササッ、世ばなうれ・・・の愛の手のキレがいい。
 最後は名曲「ダニーボーイ」を二人で。幸人の声が特にすばらしい。ハモりの部分も絶妙で、ざわりと来るぐらいでした。


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 次は、琉球オールスターズ。徳原清文・よなは徹・仲宗根創・大湾三瑠・浜川恵子の5人です。
 ゴリが徳原に、演奏後に先生はよなはのように観客に三線を投げないのかと問うたところ、「これは150万するんだ」と大慌てで固辞。こういうところを見るにつけ、かつてコミックグループ「ザ・フェーレー」にも参加した御仁ではあるけれども、根はチョー真面目な人なのではないかと思われます。
 よなはが、それぞれに流派があるためにこのような組み合わせは沖縄では難しく、東京だからできる――ということを話して、清文(せいぶん)シンシー(先生)を引き立てながら演奏開始となりました。
 「油断しるな」は、今は亡き登川誠仁を思い出させ、その愛弟子の仲宗根の揺らぎのある歌声なんて誠グヮーそのもののよう。浜川の琉球筝が入ることによって、曲全体がきらびやかになります。
 その後「富原(とぅんばる)ナークニー」、「浜千鳥節」、「いちゅび小~ハリクヤマク」。
 最後には琉球舞踊安座間本流師範の大湾三瑠によるガマク(腰)ふりふりの雑踊りが加わって、大いに盛り上がりました。三線の早弾きが自然とカチャーシーを誘引しました。

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 4番手は、9年ぶり5回目出場の桑江知子。
 前回登場のときにも思ったのだけど、この人、琉フェスに呼ぶのにふさわしい人物なの?
 沖縄生まれだけど九州育ちで、中央のプロモートデビューでふつうのJポップ系でしょ。
 「琉フェスは三線弾かない人は出られないんですよ」とは、ある沖縄ミュージシャンの言。ボクもそうするほうがいいと思う。
 しかし1曲目は、まがりなりにも三線を持ち、♪シュラヨイシュラヨイ待ちかにてぃ・・・という、沖縄風の「月詠み間(ちちゆみま)」を。佐原一哉の作詞なのだそう。まあ、これで出場するための禊ぎをクリアしたということかも。
 次は1979年に大ヒットしたデビュー曲「私のハートはストップモーション」。つまりデビュー38年目。こういう曲でも盛り上がるものになったのですね、琉フェスって。
 その後はTHE BOOMの「風になりたい」と、我如古より子の持ち歌「うんじゅぬ島」を。
 「うんじゅぬ島」は母がわが子を想い歌ううた。我如古による大人の色っぽさと深い愛情が感じられる溜息まじりのうたい方ほうがいいと思うけど、琉フェス帰りの夜に自分が口ずさんでいたのはこの曲。印象深かったということなのでしょう。



 5番手は、よなは徹バンド。よなはが4人をバックに従えてヘヴィに。
 酒持ってこいの「サイサイ節」、はベースが効果的で、続く「新エイサー節」ではよなはの三線がキレキレ。三線の切れ味という点では、今の沖縄音楽シーンでは彼がいちばんなのではないか。
 ここで、よなはのシージャ(先輩)でもある護得久流民謡研究所会長の護得久栄昇が登場。独特の風貌と話術は秀逸です。
 「写真やビデオはどんどん撮ってかまいませんからね、私に著作権なんてありませんから、どんどん撮ってインターネットで配信してくださいね」には大笑い。
 「誰(たー)がシージャか」といううたを。「誰が先輩か!」という歌詞に「ヤッケーシージャ!」(厄介な先輩だよ)と観客が返すのが楽しい。

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 護得久は1曲だけで下がり、その後はよなはのノリノリステージ。
 ロック調の「花ぬカジマヤー」はよなはオリジナル、続いて「屋慶名クーヮデーサ~唐船ドーイ」で最高潮に。
 最後はいつものとおり三線を観客席へ放り投げます。ゴリの実況中継?によれば、観客席では6人ほどが争奪戦を繰り広げており、スタッフ数名が間に入って誰が獲るかをジャンケンで決めることに。決まるまで2~3分はかかっていたようです。

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 6番手は我如古より子。
 緑色の鮮やかな着物で登場。「緊張しています~」なんて言っていたけど、本当はどうなのか。(笑) だって彼女、永年コザの「民謡ステージ姫」で歌ってきているわけですから、けっこう堂々としたものです。
 そして、今は那覇国際通りのハイサイおきなわビル(喜納昌吉&チャンプルーズやネーネーズの店と同じビル)で営業している(2016年8月から)とちゃっかり宣伝も。物腰柔らかでチャーミングだから、こういうこともより子オネーサマには許されるわけで。
 うたうは十八番ばかりがずらり。デビュー曲の「娘ジントヨー」、これもジントヨー系の「池間美童」、別れ旅うた系の「女工節」、最後は合いの手を求めて「ケーヒットゥリ節~山原汀間当」。
 ウチナーンチュならみんな心に沁みついている歌ばかり。最後の曲では、ちょうど雲間から月が顔を出しており、それを見上げながら ♪さやか照る月にジントヨ、誘わりてぃヨー・・・ に観客一同 ♪ケーヒットゥリヒットゥリ・・・と歌いだしました。チラシの「山原汀間当」もノリノリ。うーん、いいなあ、琉フェス。



 さて、トリは、パーシャクラブ。
 恒例の、幸人がどんな仮装をして現れるかが注目されるステージでしたが、今回は・・・ブルゾンちえみでした! これまで「変身」してきたアナと雪の女王やりゅうちぇるには恐ろしいものを見たときに覚える鳥肌感覚があったものですが、今回は案外似合っています。(笑)
 語りには、女性国会議員のパワハラ発言の「このハゲー!」、「ちがーだろー!」などが入って、場内爆笑の渦。いやはや、最高。幸人は声よし、歌よしだけではなく、芸人としても十分にやっていける才能を持っていると思う。
 今回は、酔い具合が軽い感じ? そういえば、ガレッジの二人も飲んではいるけれども、例年よりはかなり抑えて飲んでいる印象でした。スケジュールもびっしりのようで、ゴリは最終のフライトで沖縄に戻ったとかで、この段階で不在となっていました。
 でもって、演奏のほうはあまり新鮮味がなくいつものとおりの感が強いです。「海の彼方」をいつもよりもややスローの安定した演奏で終え、新曲だという2曲目は過去の楽曲とあまり変わり栄えしていず、パーシャの限界は近いか?!と思わせるところも。
 最後は「五穀豊穣」と「東バンタ」で、いつもながらの大盛り上がりとなります。まあ、セットリストがワンパターンなので、幸人の変装も必要なのかといううがった見方も。
 気がついたけれども、ベースが女性。あれ、神村英世は? どうやら体調不良につき休養中のようでした。

 そしてフィナーレ。参加者全員がステージに再登場し、みんなでうたいます。
 まずは「安里屋ユンタ」を仲宗根、桑江、我如古、徳原、よなは、新良、下地らが。続いて「豊年音頭」をよなは、我如古、仲宗根、またよなはが。
 この2曲だけで、19時45分、わりとあっさりと2017年の琉フェスが終わったのでした。

 今回は、琉球オールスターズ以外はアーティスト同士のからみが少なかった印象があります。「組み合わせの妙」は何だったのか。琉球オールスターズがそれだったの? 年に1回のお祭りなのだから、もっと様々なコラボレートがあってもいいのではないでしょうか。過去にはそういう企画がいろいろあっただけに、今後ここでしか見られないような企画に期待します。
 それから、今回も奄美のウタシャが不在だったのは残念。
 ともあれ、今回は天気もよくて、よかったです。また来年!

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 沖縄の「食」には独特なものが多くあります。食材そのものがユニークなことはもちろんですが、「食文化」にも見るべきものが多いのです。琉球王朝時代の流れを汲む料理法や、アメリカ占領時代に持ち込まれて定着した食習慣、そして、かつてと比較すればややパワーダウンしたとはいえ百花繚乱の大衆食堂など。
 とりわけ大衆食堂については、アンマーの愛情たっぷりのおいしさとボリュームと激安感が相俟って、もはやワンダーランド化しているなあというのが率直な感想です。したがって、沖縄を訪れれば必ず何軒かの大衆食堂で定食や沖縄そばなどを味わうことにしていて、むしろそれが沖縄訪問のいちばんの目的にもなっているこのごろです。
 で、この本。発行元のウェブページから内容の紹介文を以下に引用。

 沖縄には、独特の歴史と風土から生まれた、個性的な店が数多くあります。
 おじぃやおばぁがやっている沖縄そばの店、琉球王国時代の宮廷料理の流れを受け継ぐ琉球会席、体も心も癒されるヒージャー汁(ヤギ汁)の食堂、市場の片隅で続くりシークヮーサージュースを売るスタンド、アメリカ軍政中の時代にオープンしたアメリカンスタイルのドライブインなどなど。
 こうした店は最近、チェーン店や開発の波に押されて数が減りつつありますが、地元の人に愛され続ける名店であり、沖縄の長い歴史や風土が詰まった、大切な沖縄の食文化といえます。
 本書では、こうしたお店を紹介しながら、沖縄の古きよき文化や風土について触れていきます。
 沖縄を愛する人、沖縄のことをもっと知りたいリピーターの人にも、ぜひおすすめしたい、保存版的内容です。

 登場する店は、きしもと食堂、三笠、イラブー料理カナ、仲地山羊料理店、道頓堀、照ちゃん天ぷら、やまや、富久屋、美栄、新垣カミ菓子店、歩、花ぬ島/アガパンサス、千日、おでん東大、まんぷく食堂、シーサイドドライブイン、コーヒースタンド小嶺、ブエノチキン、ジャッキーステーキハウス、チャーリー多幸寿・・・と、名店ぞろいです。けっこう食べ歩いているつもりですが、未訪の店はまだまだたくさんあるものです。

 紹介店自体もいいですが、キッチンミノルの写真がとにかくスバラシイ! 沖縄の人々の日常が垣間見え、なによりも切り取った食べ物たちがおいしそう。料理写真撮影のスペシャリスト?! きっと食べることが、沖縄が、大好きな写真家なのでしょう。

 まさに、保存版的な内容です。こういう店が地元に愛され、末永く残っていくことを強く望みます。

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 2017年9月に買った本は、次の9冊です。

1 王都首里見て歩き  古都首里探訪会 新星出版 201607 古1431
2 沖縄を売った男  竹中明洋 扶桑社 201703 古1404
3 東京B級グルメ放浪記―知られざる名店を探せ!  鈴木隆祐 光文社知恵の森文庫 201111 古259
4 ヒストリア  池上永一 KADOKAWA 201708 2052
5 沖縄と国家  辺見庸、目取真俊 角川新書 KADOKAWA 201708 864
6 島の果て  島尾敏雄 集英社文庫 201707 734
7 長さ一キロのアナコンダがシッポを噛まれたら  椎名誠 角川文庫 201709 648
8 心 水の如く 那覇市政十六年の回想  親泊康晴 沖縄タイムス社 200201 古1237
9 樹響 でいご村から―大城貞俊作品集〈下〉 大城貞俊 人文書館 201404 2862

 4~7と9が新刊で、1~3と8が古書です。
 古書とは言っても、1や2はわりと新しいもの。1は発売時にすぐ売り切れて買えなかったのを少しだけ安く手に入れることができたもの。また2は、安くなったなら買おうとはじめから古書狙いをしていたもの。

 ここにきてようやく、沖縄モノが9冊中7冊と、王政復古の感。
 池上栄一の新刊が久々に出たのがウレシイし、9は高いので値崩れしてから古書で買おうと思っていたけどちっとも下がらないので、業を煮やして新刊でゲットです。8なんかも興味深いよなぁ。

 沖縄でないのは、3のグルメ本と7のシーナ本。すでに3は読み始めています。



 ウチナーグチの学習本。このジャンルのものはできるだけ入手して、あのやさしいタッチの言葉に触れるようにしています。沖縄県の皆さん、ウチナーグチは宝ですよ。そして日本国民の皆さん、地域語は大事ですよ、消えていくことがないように、みんなで地域語を使っていきましょうよ。

 「思わず使ってみたくなる、いきいきした表現が満載! 「ぅんじ(ほんと?)」、「長(なげー)さやー(久しぶり!)」、「済(し)むんよー(大丈夫だってば)」など、日常生活で使える沖縄語(うちなーぐち)の会話表現や慣用句を、対話例とともに計238収録。思わず使ってみたくなる表現満載で、今ではあまり使われなくなってしまったうちなーぐちが、豊かにいきいきとよみがえります。ポイントとなる語句には解説が付いて、独習者も安心。うちなーぐちの音声はHPから無料でダウンロードできます。巻末索引付き。」――という素敵な本。

 簡単なあいさつなどの基本はもちろんのこと、喜怒哀楽を表す表現や依頼の仕方、遊びや食事、恋愛の場面で使える表現、ビジネスシーンで使えるフレーズまで網羅されています。
 また、タイトルの「リアル」が示すとおり、教科書的なウチナーグチではなく、ネイティブスピーカーが日頃用いるフレーズを知ることができます。

 本に載っている238フレーズのすべてを著者が話し、その音声をダウンロードして何度でも聞けるようになっている、というのがこの本の真骨頂。読むだけではわからないイントネーションや微妙な発音などが手に取るようにわかるし、生のウチナーグチを臨場感たっぷりに味わえるのがとてもいいです。

 さて、著者の比嘉光龍(「ふぃじゃ ばいろん」と、ふりがなが施されています)。
 沖縄ではそれなりに有名人で、1969年那覇生まれの、コザ(現沖縄市)育ち。父は米国人、母は沖縄の「アメリカ系うちなーんちゅ」で、国籍は日本。24歳時に初めて三線に触れ、ウチナーグチは沖縄芝居の名優真喜志康忠から指導を受けたという人物です。
 沖縄大学地域研究所特別研究員、沖縄キリスト教学院大学・沖縄国際大学非常勤講師。その他、新聞コラム執筆、沖縄語講師としてテレビ出演、ラジオ番組パーソナリティなどに携わっています。

 後半になってくると、「御胴(うんじょー) しぐ 逆上 (ぬぶ)しやびーくとぅやーたい」(あなたはすぐに緊張しちゃうのよねっ)とか、「うぬまーま 置(う)ちきてーいびーるむんぬ」(置きっぱなしなんだもの)とか、「入(い)ららん 目(みー)んかい 入っちゃるむん」(まずいところに来ちゃったなぁという慣用句)などと、ヤマトンチュにとってはかなり高度になっていきます。
 なので、スピードラーニングは無理。まずは読み、声を出して発音し、音声を聴き・・・という段階を踏みながら、各フレーズを一つひとつじっくりと味わってみたところです。



 沖縄の映画について書かれた書物は近年いくつか出版されており、「沖縄映画論」(四方田犬彦・大嶺沙和編、作品社、2008)、「沖縄劇映画大全」(世良利和著、ボーダーインク、2008)、「沖縄まぼろし映画館」(平良竜次+當間早志著、ボーダーインク、2014)、「君よ観るや南の島-沖縄映画論」(川村湊著、春秋社、2016)などがあります。
 しかし、これらを読んでいて(「沖縄劇映画大全」は未読)、これらに先立って発刊された「アンヤタサ!」がその後の沖縄映画の考察に大きな影響を与えており、沖縄映画論の白眉であるということがわかったので、2001年に発刊されたこの本を古書市場から買って読んだところです。
 手に入れたこの古書には、2001年9月17日付けで著者のサインが入っていました。元の持ち主の方がいらっしゃいましたらぜひご一報ください。

 「戦後沖縄映画興行の特異な歴史―。米軍占領下、娯楽に飢えた庶民の声に応えて映画が復活。露天劇場での上映、闇フィルムの横行、米軍による検閲など混乱期を切り開いた興行師たちの活躍・葛藤、業界の歴史を、当時上映された映画の話題と共にひもといた映画世相史。」(Amazonの商品説明から)

 著者は、1934年那覇市泊の生まれで昭和医科大卒。那覇市松川に山里外科を開業していましたが、残念ながら2014年没。
 当書の「あとがき」で、「恐らく、沖縄で後にも先にも私ほど長く映画を愛し、映画に関わり、趣味の域を超え、道楽し、持続するつらさ故に楽が欠け、ひたすら無限の「道」を歩みつづけた者はいないだろう。5歳から映画を見始め、映画を食べてもう61年にもなる。映画館で8千本以上、ビデオで2千本以上消化している。17年間の東京滞在中は年平均310本、1960年(独身最後の年)には382本を記録。評論家の荻昌弘先生も「こんな沢山映画見て、よく医者になれましたね」と驚かれた」と記しています。

 闇フィルム・巡回映画・無声映画の時代を書いた第1章と、貿易が再開され正規輸入のフィルムが上映されだした1951年以降を記した第2章により構成。
 映画全盛の頃の写真が口絵のほか本文の随所に見られ、当時の映画館の華やかな様子が伺えます。
 また、巻末には、戦後の映画興行の歴史を知ることができる年表や、戦後の上映映画のリスト、沖縄に関係する映画のリスト、戦後映画復興期の主要興行社の役員名簿などが資料編としてついており、史料としての価値もありそうです。



 2013年12月から15年5月まで、沖縄タイムスに掲載された大型インタビューの連載記事20回分を単行本化したものです。表題に「1」とあるので、今後も単行化が続いていくのかもしれません。
 語り手は、次の20人です。
 翁長雄志(那覇市長(当時))、金城勉(公明党県本幹事長)、大田昌秀(元沖縄県知事)、稲嶺恵一(前沖縄県知事)、浜田剛史(プロボクシング元世界王者)、我喜屋優(興南学園理事長)、座喜味彪好(元副知事、元沖電社長)、古謝美佐子(民謡歌手)、宮城篤実(前嘉手納町長)、大城立裕(作家)、渡久地政弘(連合沖縄元会長)、西向幸三(エフエム沖縄アナウンサー)、仲里利信(衆院議員)、津嘉山正種(俳優)、照屋義実(県商工会連合会長)、八木政男(沖縄芝居役者)、具志堅隆松(「ガマフヤー」代表)、新崎盛暉(沖縄大学名誉教授)、山城博治(沖縄平和運動センター議長)、島袋艶子(でいご娘リーダー)。
 自分にとっては過半数以上が既知の人物です。この20人が、それぞれの体験から沖縄の過去、現在、未来を語っていますが、それぞれ各界でトップを張ってきた人たちだけに、聞かされ、読まされるものがあります。

 内容等については、沖縄タイムス社のホームページに載っていた書評を以下に引用し、紹介に代えます。「2」の発刊を期待しましょう。

保革を超えた真実の声 (2016年7月16日掲載)
 言葉には心に響くものとそうでないものの2種類がある。本書に収められた沖縄を代表する各界20人の証言は、読む者の心に深く染み入って、ときに沈思黙考させ、ときに涙させる。
 本書は沖縄タイムスに掲載された同名の連載企画をまとめたものである。新聞紙面の1面と2面を大きく割いて、各界の重要人物の生の声をインタビュー形式で載せ、それを伝え残そうとしたのが、本企画である。多くの読者が待ち望んだ1冊であり、これが単行本として県内はもちろんのこと、日本全国に広がっていくことを、強く願いたい。
 本書に登場する人々は、現沖縄県知事の翁長雄志氏をはじめ、沖縄の政治、経済、社会、文化、教育、芸能、スポーツの各分野で活躍するキーマンたちである。本書を読むと、保守とか革新とかいう政治的言説を超えて、沖縄の厳しい現実の中で生きてきた人たちの真実の声を発見できる。苦悩と葛藤をくぐり抜けてきた彼ら、彼女らの言の葉は、強くてしっかりとしている。
 本書には、政治的に保守といわれてきた人たちも多数登場する。しかしその人たちも含めて、本書に登場する人々は、普天間基地の県内移設や基地の過重負担に対して反対の姿勢を示している。各人その理由は異なっても、そこには沖縄戦からアメリカ統治を経て現在に至る、70年にわたる沖縄の歴史そのものが横たわっている。
 人の生きざまは、単なる経歴からはみえてこない。その生い立ちから分岐となった出来事まで含めて、その人の生きてきた歩みそのものが、その人のいまの行動や決断を形づくる。本書はそうした人間の奥深きところまで分け入って、その人の思いや行動の源泉を紡ぎだしている。
 日本復帰前後に生まれた評者とほぼ同じ世代の13人の記者による熱意と誠意あるインタビューが、これら戦後を生き抜いてきた20人の語り手たちの心と共振して、本書は生まれたといえよう。
 その意味では、この共振こそが「次代への伝言」そのものである。(平良好利・法政大学非常勤講師)



 背表紙の内容紹介文は、次のとおり。
 「明治初期、琉球王朝の末裔として生まれた本部朝基は、王家に伝わる武術、手(ティー)の実戦修行を繰り返していた。噂を聞きつけた猛者たちの挑戦を受け、鍛錬を積む日々。やがて拠点を内地へ移した朝基は、柔道やボクシングの使い手と他流試合を行うようになる。命のやりとりの中で“真の強さとは何か”を追求した伝説の唐手家が、生涯を掛けた戦いの果てに辿りついた真理とは…。武闘小説の真骨頂。」

 格闘技ファンにとっては「ブサーザールー」として伝説となっている、空手道の開拓者・本部朝基の一代記です。
 2008年に琉球新報で連載されたもので、その当時から沖縄では大変な話題になったと聞いています。
 本部朝基は、廃藩置県後の沖縄で、琉球王家の三男として育ちました。幼い頃から長兄に「猿」とからかわれていた朝基は、王家の一子相伝として伝わる「御殿手」を習う兄に勝つため、「手」を始めます。
 糸州安恒、松茂良興作などに手ほどきを受けながら、辻に立ち「掛け試し」を重ねる朝基。棒の使い手、女武士、巨漢の力士、示現流剣術の使い手らとの試合を通じ、朝基は手の本質に気がつき、腕を上げていきます。
 一方で、大和世になってから、沖縄武士をはじめとした沖縄人が誇りと自信を失いつつあるということにも気づきます。そして朝基は、他流試合に対する批判を内外から受けながらも、唐手の実力を示すことで沖縄武士の誇りを取り戻そうと決意します。
 日露戦争後、事業に行き詰まった朝基は、出稼ぎのため大阪へ乗り込みます。そこで目の当たりにしたのは、普及のため骨抜きになってしまった唐手でした。
 奮起した朝基は、「手」の本質を伝えるべく、大阪から東京へ。日本の中枢で朝基の挑戦が始まります。

 著者は、「隠蔽捜査」シリーズで日本推理作家協会賞・山本周五郎賞をダブル受賞した作家。
 一方で、沖縄空手を30年近く続け、自ら「空手道今野塾」を主宰し、「空手の本質は沖縄にしかない」といってはばからない武道家です。
 今野作品はこれまでに「義珍の拳」(2005)と「チャンミーグヮー」(2014)を読んでおり、「武士猿(ブサーザールー)」(2009)は3冊目になりました。

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 映画「深呼吸の必要」は、2004年5月に公開された、沖縄のサトウキビ畑を舞台にした青春映画です。
 おじいとおばあの耕作するサトウキビ畑に、期日までにサトウキビの収穫を終わらせるため、若者たちがアルバイト「キビ刈隊」として集められる。
 過酷なアルバイトの毎日に、垣間見えるそれぞれの過去、悩み、希望。そんな若者たちの間に起こる、出会いと葛藤、心の交流が、沖縄の美しい自然の中でさわやかに描かれている。――といった映画です。
 与那国島サトウキビ刈り援農隊を体験した立松和平の著書を読んだことがあり、実際のキビ刈りはマジで辛くて、映画のようにはいかないようですが、そこは眼をつぶりましょう。
 本を読む前に、この映画のDVDを見ました。ヒロインに香里奈を据え、キビ刈り隊のメンバーとして谷原章介や長澤まさみが脇を固めています。キビ刈り隊員にそうそう美男美女ばかりいるもんやない、ということにも眼をつぶりましょう。
 沖縄関連では、おじいを北村三郎、おばあを吉田妙子という重鎮たちが演じていました。

 ノベライズ本は、DVDといっしょに購入したので、映画を見た後ほぼすぐに読んだところ。
 争いごとが苦手で、愛想笑いばかりしている派遣社員のひなみ、自分の殻に閉じこもっている高校生の加奈子、自分の夢から逃げ出した池永…。沖縄のキビ刈り隊に参加した7人の若者達はそれぞれ心に傷を抱えています。大自然の中での過酷で単調な作業を通じ、それぞれが自分自身と向き合い、徐々に癒されていく姿が描かれています。

 映画はビジュアルな面と音声があるのでわかりやすく、監督の掌の上で感動したり考えさせられたりとすっかり術中にはまってしまいますが、文字からしか情報が入らない本の場合は読み手によってさまざまな思いが生じてくるもの。
 そういう意味からすると、まずは映画を見て、本で再度味わうというのは、本を読んでいるときのライブ感がぐっと高まって、なかなかいいものだなと思ったところです。
 一方、映画を元にして書かれた小説なので、映画そのままじゃんというところも多々あったことは否めません。でもまあ、文章で説明されてようやく、映画のあのシーンはそういうことを表現したかったのかとわかったりしたので、よかったとしましょう。



 「米軍海兵隊普天間飛行場の移設をめぐり、国と沖縄県との対立が深刻化している。単純化した構図でとらえられることの多い沖縄問題をどう考えればよいのか。
 本書では琉球処分、沖縄戦から米国統治時代、日本復帰という近代以降の歴史を踏まえ、特に沖縄県の行政に注目。経済振興と米軍基地問題という沖縄の二大課題とそれに対する取り組みを追い、名実ともに「東アジアの中心」に位置しリアリズムに徹する沖縄の論理を示す。」
 ――という、2017年2月頃に沖縄でベストセラーランキングの1位に君臨した新書です。

 編著者は、1947年伊是名島生まれ。琉球史を専門とする歴史学者で、琉球大学名誉教授。沖縄県立博物館主査、浦添市立図書館長などを経て、1994年より琉球大学法文学部国際言語文化学科教授。2013年に定年退職し、同年4月から2014年12月まで仲井眞弘多沖縄県知事のもとで副知事。首里城復元の委員、NHK大河ドラマ「琉球の風」の監修者でもあります。
 執筆は、高良のほかに川上好久(元沖縄県職員から仲井真知事の副知事)、小橋川健二(元沖縄県総務部長)、又吉進(元沖縄県知事公室長)らが担っています。

 沖縄の行政マンたちが経済復興と基地問題について綴るという異色の一冊です。
 章立ては、「「沖縄問題」の問題とは何か」、「「辺境県」からの脱出-沖縄振興の展開」、「アジアのフロントランナーを目指して-沖縄振興の新しいパラダイム」、「沖縄県財政と米軍基地の跡地利用」、「基地問題の理想と現実」の5本。

 こうして見ると、沖縄県にとっての大きな問題は、他県に追いつけ追い越せの経済振興であり、かつてその一翼を担っていた基地という自由にならない問題をどう解決していくかだったといえるのでしょう。
 それらを苦悩しながら進めてきた理念の集大成が数次にわたる「沖縄振興計画」であり、それらを改めて検証することで、沖縄県の進むべき道をクールな行政の担い手として再確認しているように思えます。

 行政マンが、理念と現実の間で苦悶しながら、沖縄問題と日々格闘し、職責を全うしようと努力している姿が、背景にうっすらと見えてきます。
 沖縄県は、日本外交が沖縄問題に関する規定路線を見直そうとしないために、県でありながら独自の外交まで行わざるを得ないという、地方自治体として特殊な地位にあるといわざるを得ません。自治体職員がそういうことまでやっているわけで、一般の自治体職員は仰天するのではないでしょうか。

 高良ら沖縄の行政マンたちが職務を通じて痛感したのは、問題を発見し、それを指弾する態度に終始するのではなく、現実に立脚しながら問題をどのように解決できるか、そのことに専念するのが大事だ、ということでした。
 沖縄については近時とかく本土側から一方的かつ論拠に乏しい形での否定的発言が相次いでいます。しかし高良らは、これまで出版されてきた多くの沖縄問題論とは明らかに異なる位相に立ち、沖縄県政の実務と論理を示すことによって、沖縄認識をめぐる議論を深化させようと試みているように見えます。
 事柄が政治性を帯びているために、当書の良し悪しをそのどちらかの二元論で断じるのはむずかしいですが、各人の判断に一石を投じた書となったことは間違いないものと思います。

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 10月中旬に本をまとめ買い。13冊も買っちゃいました。
 それらは次のとおりです。

1 沖縄、シマで音楽映画  磯田健一郎 編集室屋上 201701 古258
2 トラオ―徳田虎雄 不随の病院王  青木理 小学館 201112 古548
3 母の遺したもの―沖縄・座間味島「集団自決」の新しい証言  宮城晴美 高文研 200012 古397
4 潮風エスケープ  額賀澪 中央公論新社 201707 古620
5 神は細部に宿り給う―地名と民俗学  谷川健一 人文書院 198012 古717
6 戦場が見える島・沖縄―50年間の取材から  嬉野京子 新日本出版社 201509 古1070
7 愚か者の夢追い半生記―ある中小企業経営者の喜びと悲しみ  渥美雪山 新風舎 200411 古1096
8 春秋山伏記  藤沢周平 新潮文庫 198402 古258
9 一茶  藤沢周平 文春文庫 200904 古281
10 神隠し  藤沢周平 新潮文庫 198309 古258
11 驟(はし)り雨   藤沢周平 新潮文庫 198502 古258
12 回天の門  藤沢周平 文春文庫 198610 古258
13 雪明かり(新装版)  藤沢周平 講談社文庫 200611 古258

 とうとう買う本のすべてが古書になってしまいました。
 それぞれ送料が257円ですから、最後数字からこの額を引いたものが古書価格です。
 このうち最も古いのは、5の1980年です。

 1から7が沖縄関連。このうち2、3、7は個人の半世紀、一代記的なものでしょうか。
 このところ沖縄本の読書スピードが軽快なので、いろいろと買い足しているところです。

 8から13は藤沢周平。文庫本をほぼ発売順に読んできており、ようやく1980年代前半まで来たところ。まだまだ先は長いのですが、気を長くして読んでいこうと思っています。