2か月以上前に読み終えた本ですが、インプレをかくのが億劫でずるずると書かないできました。でもまあ、思ったことを自分なりに書けばいいだけだと思い直せば、そんなにしゃちほこばることもないのでしょう。
 そもそもインプレを書き始めたのは、読んだことを自分の備忘のために書きとどめておこうと思ったからであって、立派な文章を誰かに読んでもらおうなどというような高邁な発想ではないのですから。

 というわけでこの本、文芸社の刊行によるものです。つまり、自費出版に近い内容のものが多く、文章表現の巧拙もまあそれなりで、どちらかと言うと自分のこのブログと同じように、書き手の自己満足が中心となっている場合があります。
 この作品についてもその傾向がないとは言えませんが、これまでに読んできた同社の作品群と比較すれば、かなり「読める」部類に入っているのではないかと思われます。

 沖縄の本土復帰から2年経った1970年代半ば、主人公は放射線技師として内地から沖縄に赴任することになります。その滞在期間はわずか3カ月ですが、その短い期間に出会った人々や文化、歴史は主人公に様々な思いをもたらしたのでした。
 そのようなストーリーで、沖縄を音楽と基地という視点で捉えながら、本土復帰に揺れる沖縄の横顔を描いた小説となっています。
 著者は、1944年生まれ、大阪生まれの方です。

 仕事の合間に首里城、南武戦跡、コザの街、金武の観音寺、残波岬、今帰仁城、さらには宮古・石垣の先島まで足を延ばしています。
 ところどころにおもろさうしの琉歌や民謡の歌詞などが挿入されていて、風流も漂います。

 140ページそこそこの本なので、さらりと読了です。
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 主人公は、初代小林流空手道の究道館会長であり、全沖縄空手道連盟会長だった比嘉佑直。16歳で空手を志し、戦前・戦後を通じて沖縄で生き沖縄で逝った拳豪であり、その覇気に満ちた生きざまが描かれています。

 書くのは、入門以来氏比嘉佑直が没するまでの26年間、空手の稽古のみならず私事に及んで薫陶を受けた比嘉の直弟子に当たる人物で、そうなれば当然ながらその筆致は熱いものがあります。

 比嘉は、若い頃は商業学校で野球部に所属し、空手を極めるために大兵猛者たちが跋扈、徘徊する辻遊郭でケンカ勝負を挑み、数か所に及ぶ致命的な負傷を負いながらも究極の空手を求めます。
 終戦後は民警察、琉球警察、機動隊隊長として、獰猛な米国兵を相手に立ち向かい、また、荒廃し無法化した愚連隊やヤクザ組織を取り締まり、住民の安全安寧に尽力したとのこと。
 さらに、那覇市議会議員、那覇大綱挽保存会会長、全沖縄空手道連盟会長として辣腕をふるい、今日の那覇市発展の一翼を担ってきた功績は大きいといいます。
 そんな比嘉を知る人は少なくなるばかりで悲しいと愛弟子は嘆き、浅学非才を嘆きながらやむにやまれず筆を執ったというのが、この作品です。

 表紙左が、26歳の比嘉佑直。
 戦前の辻遊郭の荒くれた男たちの一面を知ることができたのは一つの僥倖。
 一本気な空手道家の一代記。人に歴史ありといいますが、こういう本こそ読んで充実感が得られるものだと思います。


 小原猛の沖縄怪談本は過去にボーダーインクから「琉球怪談 現代実話集 闇と癒しの百物語」、「七つ橋を渡って 琉球怪談 闇と癒しの百物語」の2冊が出されていますが、今度は中央のTOブックスというところから発売されたのがコレ。
 ワンパターンで飽きはしないかというご意見もありましょうが、沖縄の怪談は読んでいてちっとも怖くなく、むしろその場に立ち会って霊たちと交信してみたくなるような情や温もりがあり、読んでいて引き込まれるようなところがあるので、買ってみたところ。

 黒い表紙に、「唯一の地上戦の土地、唯一のシャーマン的世界の生き残りがいる島、そこに巣食うマジムンたちは、今も静かに時を待つ――」と煽るキャッチ、そして各ページに黒い縁取りのあるおどろおどろしい体裁。
 だけど、沖縄の霊たちって、本土よりもずっと、我々と近いところにいるような気がしてなりません。霊たちは現世の人々の隣人として存在し、しかもそこここにたくさんいるような状態であれば、取り立てて珍しくもなくなるのでしょう。
 また、そのうち悪さをする霊はほんの一部であり、むしろ現世の人々を救い、助けようとするようなやさしい祖霊もたくさんいるようなので、怖く感じることもないのでしょう。

 VFダンスホール跡にまつわる話、砂場のオジイ、ハタパギマンジャイの話、メーヌカーの祟り、ヤナカジ、黒魔術に関する話――などなど全43編。
 「沖縄の怖い話(2) 壊せない場所」が発売されているようなので、これも注文してしまおうっと。


 アジア、バンコク、台湾、ベトナムと続いた下川裕治の「週末」シリーズに「沖縄」が加わりました。
 「アジアが潜む沖縄そば、脊髄反射のようにカチャーシーを踊る人々、マイペースなおばぁ、突っ込みどころ満載の看板・・・日本なのになんだかゆるい沖縄には、いつもの甘い香りの風が吹く。基地問題で揺れ、LCCが離島にも就航した沖縄。島の空気をいっぱいに吸い込む週末旅へ」――と、裏カバーはナビゲート。

 内容をもう少し詳しく書くと、全部で9つの章立てになっており、それらは1「沖縄そば 食べるそばを求めて国道58号線を北上する」、2「カチャーシー カメおばぁが教えてくれる本土の人間の限界」、3「LCC 台風欠航で揺れる沖縄フリークの胸のうち」、4「琉球王国と県庁 沖縄のタブーに潜む琉球王朝の血」、5「波照間島 天文おたくのパイパティローマという居場所」、6「農連市場 「午前3時の湯気」の現在を撮る」、7「コザ 世替わりを重ねた街の人生の栄枯盛衰」、8「沖縄通い者がすすめる週末沖縄」、9「在住者がすすめる週末沖縄」。

 1では、20年前に那覇で食べていたような“噛む”沖縄そばを求めて「首里そば」「亀かめそば」「むつみ橋かどや」「田舎」、那覇バスターミナルの「みつ食堂」と渡り歩き、普天間の「三角食堂」の名護の「八重食堂」でこれだっ!と発見。
 2では、栄町市場の「おばぁラッパーズ」首領の新城カメおばぁから直伝でカチャーシーを習い、踊りには笑顔がもっとも大切であることを学びます。
 書き手として様々な人が登場します。6はこの本の写真担当の阿部稔也、7は仲村清司、8ははるやまひろぶみとこいけたつみ、9は平良竜次、嘉手川学、高倉直子、及川真由美、新崎栄作。著者の沖縄関連の人脈が見て取れます。


 「なぜ今、独立なのか! 琉球人教授が書き下ろした植民地琉球の歴史と現状、そして独立への道」
 ――ということで、沖縄関連書の中では物議を醸した本として2014年のある意味代表作と言えるかもしれません。

 強い信念のもと、専らある1つの観点から内容が構成されているので、まずこのことを十分許容して文章になじんでいかないと、読み進めることがつらくなる場合があると思います。自分はそれにはまってしまい、残念ながら最後まで納得しながら読むことができませんでした。

 それはたとえば、
 「現在の日本は、琉球人が責任ある個人として主体的に国家意思の形成に参加できる国ではありません。それは、戦後史を俯瞰しただけでもわかります。およそ国家というものは、全国民に対して平等に、福利の源泉として存在していなければならないはずです。しかしながら、日本という国においては、この全国民の中に琉球人は含まれていない。
 琉球人が日本国の一部であることによって多くの犠牲を背負わされるのならば、自らの国家をつくるという選択肢を琉球人が真剣に考えても当然なのではないでしょうか。」
――という一部をとってみてもわかっていただけるのではないか。
 論理的には大きな過ちはないと思われますが、ここまで断言調で構成されると、そう考える理由なり背景を読む者に対してもっと明らかにしてから展開するべきではないかという疑問がふつふつと湧きあがってくるのです。

 その説明は要しないと考えるのであれば、この論説はその道の熟達者によってのみ読まれるべきであって、訴えたいことの大部分は一般庶民には伝わらず、今後の思想的広がりは期待できないことになります。平たく言えば、そういうのを唯我独尊と言うのでしょう。

 琉球独立というひとつの方法論であり考え方が日本国民にも十分に浸透するには、万人に「そうだな」と思ってもらえるような論述技術が必要でしょう。
 生意気言ってスミマセン。かなり期待していたものですから。


 沖縄戦の最末期に「沖縄県民斯ク戦ヘリ 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」という名電文を打った大田實海軍中将。そのご子息が、海上自衛隊で勤務し、しかもその人が1993年のペルシャ湾の掃海派遣部隊の指揮官だったことは知りませんでした。
 その人の名は、落合畯(たおさ)。

 イラクのフセイン大統領が突然クウェートに侵攻した1990年8月、各国がクウェート支援に回る中、経済的側面からの支援に走った日本の貢献策は世界に認められず、「トゥーリトル、トゥーレイト」と揶揄されました。
 その打開策として派遣されたのが、落合の率いる掃海部隊だったわけです。

 大田實と落合畯という二人の男の半生を、父と子という縦軸と、沖縄とペルシャ湾という横軸で織りなしながら描く物語は、単なる親子のエピソードにとどまらず、海洋国家日本の海軍と偉大な海の男たちの物語になっています。

 著者は女性。国家公務員で、防衛庁勤務の事務官と結婚して新婚旅行で沖縄に赴き、夫から有無を言わさず連れて行かれた南風原の海軍司令部豪跡で、大田中将の電報の話を知ったとのこと。そして夫からペルシャ湾掃海派遣部隊の指揮官が大田の三男であることを聞き、この本を記し始めたということです。

 序章から終章まで全10章。
 「父に知らせたい叙勲」、「ペルシャ湾掃海派遣部隊・落合指揮官誕生!」、「掃海屋の悩みと誇り」、「子だくさんの海軍軍人―大田實の人となり」、「沖縄の絆・大田中将から畯へのバトン」、「蛙の子は蛙―畯のネイビーへの道」、「ペルシャ湾へ! 錨は上げたが五里霧中」、「掃海隊総員、大奮戦」、「防人たちの栄光」、「海の父子鷹」。


 著者は、1930年、奄美大島笠利町生まれ。大島高校を卒業した後、電気通信局、南海日日新聞社を経て、フリーの速記者となり復帰運動や婦人運動に身を投じ、1953年に鹿児島市に転居、その後短歌や小説を執筆しているという方です。

 80歳を過ぎ、島を離れて60年が経ち、故郷奄美の風景や人情を懐かしがりながら、幼い頃の笠利の山村での暮らしを小説風に仕立てて綴っています。
 それらは、自然の中で砂糖づくりの手伝いや、大人に交じって楽しく作業した田植えや稲刈り、家族が語った昔話や奄美の伝説、意思とは裏腹にうまく進まない就職、米軍の圧政の中での復帰運動・青年運動の様子など。
 掲載作品は、「島わらべ」、「永田橋劇場」、「暗夜の山路」、「焔の町」、「春風」、「彼岸花」、「運は魔物」、「最初の経験」、「風の中」、「青春の歌」の10編となっています。

 文章自体は、状況説明が不足していると感じるところがあり、またストーリーの進み具合に必要以上の緩急がついているために、慎重に読み進めないと全体の勘所を捉え損ねてしまう恐れがあったように思います。つまりは、著者の思い入れがたっぷり詰め込まれていて、それが原動力になって筆が進められているということなのでしょうけれど。
 それにしても、この本の発刊が2013年12月ですから、83歳になってからの編集作業だったわけで、その健啖ぶりには脱帽するばかりです。
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 2014年10月以降に買った沖縄本は、以下の6冊です。

1 これが沖縄の生きる道        仲村清司        亜紀書房      1620
2 沖縄から愛をこめて          西村京太郎      講談社ノベルズ   864
3 沖縄のハ・テ・ナ!?         沖縄ナンデモ調査隊 双葉文庫      680
4 島唄を歩く2               小浜 司        琉球新報社     1620
5 意外と知らない沖縄県の歴史を読み解く! 沖縄「地理・地名・地図」の謎
                        安里進 監修     実業之日本社    864
6 沖縄の怖い話・弐 壊せない場所 小原猛         TOブックス     1296

 この4カ月で6冊というのは、自分にとっては少ない。
 これは、買わなかったのではなく、買えなかったのです。沖縄本を買おうとして書籍販売のページなどをチェックしていたのですが、いかんせん、沖縄本の発行数が少ないのです。
 そんな状況なので、未読の沖縄本のストックは徐々に減ってきており、自分にとってはそろそろ危険レベルに達してきたところ。「テキストの備蓄品」は最大時の5分の2以下になっており、ざっと20冊ほど。これは普通のペースで読んでいけば4カ月程度のストックであり、今後も発行数が少ないとたちまち飢餓状態に陥ってしまう危険性があるわけです。

 新刊本ばかりに目をやっていると到底備蓄を満たすことは困難と思われるので、この2、3日は古書市場にも手を出して大量買いを入れているところ。
 それらについては今後別途紹介することにしましょう。
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 沖縄本のストックの減少に慄(おのの)いていたこの頃でしたが、この年初にアマゾン経由で古書の大量買いをしました。
 それらがこの2日ほどの間にメール便などで次々に届いたので、日中の留守番をしている母は送りつけ商法か何かの嫌がらせではないかと心配したのではないだろうか。

 それらは次のとおりです。

1 「琉球の季節に」 大城立裕、読売新聞 (1993/07)
2 「さらば福州琉球館」 大城立裕、朝日新聞 (1994/02)
3 「普天間よ」 大城立裕、新潮社 (2011/06)
4 「ボクサー回流―平仲明信と「沖縄」の10年」 山岡淳一郎、文藝春秋 (1999/07)
5 「沖縄海賊」 笹沢左保、徳間文庫(1981/11)
6 「沖縄時間―本物のスローライフの見つけ方」 岸朝子、大和出版 (2004/07)
7 「ナビィの恋―沖縄・永遠の愛してるランド」 藤田正ほか、データハウス (1999/11)
8 「沖縄 若夏の記憶」 大石芳野、岩波書店 (1997/06)
9 「十津川警部 海の挽歌」 西村京太郎、徳間文庫(2006/10)
10 「沖縄巡礼の旅路(人権文化・教育叢書 巡礼いのちの旅路)」
    加来宣幸、西日本新聞社(2002/03)
11 「豪華船は謎を乗せて―沖縄・神戸もめごとクルーズ」 辻 真先、光風社文庫(1996/01)
12 「24365沖縄―24hours 365days Okinawa」
    24365沖縄研究会、集英社インターナショナル(2006/07)
13 「ディープ沖縄―現地スタッフが教える沖縄ガイド」 アスキー(2000/06)
14 「南へ。―沖縄・奄美にいってみる」 鹿子狂之介、えあ社 (1999/09)

 14冊も買って、総額4,734円(うち送料3,598円)。高価なものを買わない限り、読書というのはものすごく金のかからない趣味だ。これらをすべて読むとなると自分のペースではだいたい3~4カ月はかかる。ということは、ひと月千数百円だものな。
 ゴルフに行けば1回で1万円ぐらい? 旅行すればもっとかかるし、居酒屋めぐりだって安くみてもひと晩5千円ぐらいはいくだろう。
 多様な世界を垣間見ることもできるし、本はいいよなあ。