以前から買おうと思ってマークしていたのですが、ネットショップで2度の品切れキャンセル。忸怩たる思いでいたところ、沖縄訪問時に書店で発見! これ幸いとばかりに買ってきました。

 琉球大学は、異なった伝統文化の混成により“ハイブリッドな”高等教育機関として1950年に首里城跡地で産声をあげて以来、人間でいえば「還暦」を迎えるわけですが、その設立経緯や背景の詳細については、これまでほとんどと言っていいほど書かれていませんでした。
 このようなことについて書くことは、沖縄戦後文化史を理解するためにも不可欠である。――そんな興味深いテーマをもって書かれたのが、本書です。

 大学誕生の際の理念や大学の構成などが、言うなれば西欧の西漸(フロンティア)運動やアメリカの拡張思想に淵源を持つこと、大学設立計画にはハワイの沖縄系社会の指導者たちが深く関与したこと、大学の運営が、ミシガン・ミッションと呼ばれるミシガン州立大学の教授団の協力によって行われてきたことなど、これまであまり聞いたことのなかった興味深い事実が多く記載されています。

 琉球新報の文化面で、2008年1月から11月まで40回にわたって連載された文章を加筆、修正して上梓したという良書。

 あとがきには次のようなことが書かれています。
「琉大の歴史は、沖縄の戦後社会の歴史を色濃く反映する。そのような歴史を知り、その誕生と成長の物語を語ることは、沖縄に住む私たち自身の歴史を知ることと重なる。これは、いまだ未完の物語である。これからも補完され、書き直され、ディテールを埋めていく仕事が続くことだろう。本書が、そのような未来に継続される仕事に貢献するものになるのであれば、それは望外の喜びである」

 ――歴史の究明とは、そういうたゆまぬ努力があってのもの。ぜひ、そうあってほしいものです。
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 小説の文庫本で、まえがき、あとがき、解説、著者紹介などがまったくないため、ちょっと調べてみました。
 著者は、1970年、福岡県生まれの、この作品を発表したときはまだ33歳という気鋭。当然、沖縄戦などは経験していません。人間ドラマに主眼を置き、戦争を真摯に描き続ける異色のミステリー作家だとのことです。

 戦争を知らない世代が戦争を描く、ということについては、なんかだまされたような気がする一面があると同時に、そういうことを題材にするのはかなり作家として勇気がいることなのだろうなと思ったり。まずそのことに賛否両論があるのでしょう。
 でも、直木賞候補に3回もエントリーされたということは、作風、筆致などの面でかなりの実力があるということなのだろうな。

 ハワイの日系二世が、アメリカで日本兵としての訓練を受け、沖縄戦にスパイとして投入されます。
 一方、主人公は安次嶺弥一、満11歳。国民学校で学んだ沖縄の軍国少年です。
 その弥一の周辺に存在する多くの日本兵。その何人かが詳細に記述されます。
 それらの日本兵のうちの誰かがアメリカのスパイの日系二世なのだろうな、という形でストーリーは展開し、最後にその種明かしが行われます。

 沖縄戦の時系列的な展開や、歴史的戦闘に関する記述、県民の南下の際に登場する島尻の地名などには破綻はなく、知らずに読めば沖縄戦のドキュメンタリーとしても読めそうなくらいしっかりした内容です。
 しかし、11歳の少年が妙に賢すぎたり、彼がどの日本兵がスパイだと、いつ、気づいたかを明らかにしていく過程などは、いかにも小説というか、事実じゃねーよコレと思わせられるところも。

 このようなアンバランスは少し抑えたほうがいいと思うし、そう難解でもないストーリーを余分な知的処理によって不明瞭にしてしまっている点なども、修正していったほうがよいと思います。