20歳にして人生最悪のときを迎えた主人公・犬彦。大学2浪の身のうえに、絶好調だったバンドのほうも、まもなくメジャーデビューというときに仲間の城司とぶつかってご破算に。その上、脳腫瘍であることを宣告され、恋人ナナナはなぜか城司とともに南へと失踪してしまいます。

 犬彦は、途方に暮れながらも、残された時間、失踪した二人を追って東京~沖縄~石垣~波照間とめぐっていきます。
 その途中、拳銃を持ったまま逃走する警察官スズキと、城司を探す旅をしている女子中学生の理沙が彼の道づれとなりますが、この2人が追跡行にいい彩りを添えています。

 城司は沖縄・コザの出身。父親は米兵で、母親は行方不明。石垣島に住む祖母に引き取られて子ども時代を過ごしたという設定です。
 そして祖母は、波照間島生まれで、ケーキ時代といわれた戦後の数年間、与那国島での密貿易で財をなした人物。
 城司は、その祖母から教わったしまうたの歌詞に財宝の隠し場所が秘められていることに気づき、財宝を掘り当てるべく波照間島に向かったのでした。
 さてさて、その結末やいかに。

 疾走感たっぷりに繰り広げられるロードノベル。
 しまうたや与那国島の密貿易に関することが巧みに文中に練りこまれているのが、沖縄ファンにはたまりません。
 巻末の「謝辞」によれば、しまうたについては仲宗根幸市氏がその基礎から指南したそう。ナルホドなあ。物語の鍵となっている城司がうたっていたしまうたは、それがとぅばらーまに乗せてうたわれるというのは語呂が合わないにしろ、見事なヤイマ口(八重山語)でした。
 また、与那国の密貿易に関しては、やはり、「ナツコ 沖縄密貿易の女王」(奥野修司著)がベースになっていたようです。

 なお、GTSとは、ゴーイングトゥサウスの意。GTSなんて、かつての名車スカイラインみたいでカッコイイな。(笑)
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 琉フェス東京を主催するM&Iカンパニーから琉フェス‘09の先行予約受付開始のメールが届きました!
 去年は確か5月中に開催の報せが届いていたので、はて、今年はどうなったのかと心配し始めていたのでした。よもや、開催せず、なんてならないだろうなと。

 メールによれば、今年の東京開催は、
 9月20日(日)。 開場は15:15、開演は16:00  
 会場は、恒例の日比谷野外音楽堂
です。
 もちろん、雨天決行。去年は土砂降りにやられましたが、今年はだいじょうぶかな?!(笑)

 そして、注目の出演者は・・・
 登川誠仁    ・・・ 06年以来の御大登場! 寄る年並みにどこまで抗することができるか
 古謝美佐子   ・・・ なんと、01年以来の出場。
 大工哲弘    ・・・ 08年は大トリを務めた八重山の重鎮。ツゥンダラーズの踊りも楽しみ
 我如古より子  ・・・ 03年以来の東京見参。吉川忠英は同行するのか?
 パーシャクラブ ・・・ 雨男たちの再来。降らすなよ
 よなは徹     ・・・ 沖縄民謡界のホープ、08年に続いての出場
 他

 出場者は少ないが、東京開催にしては久々に琉フェスらしい、民謡にシフトした布陣と言えましょう。言わば、流行に媚びない、玄人好みのメンバーです。
 司会はガレッジセール。

 前売6,800円、当日7,300円で、
 一般発売日は6月26日(金)とのことです。

 まずはお知らせまで。


 昨年の琉フェス東京。ひどい雨だったなぁ・・・。
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 りんけんバンドの歌姫上原知子は、1958年、糸満市糸満に生まれた。
 兄弟は、兄一人、3つ違いの妹千佳子、6つほど齢の離れた弟の4人。大度(おおど、現糸満市)出身の母と、祖母を加えた7人家族であった。
 父・長幸は、糸満で最も繁盛するダンパチャー(理髪店)を営んでおり、夜は民謡研究所の看板を掲げていた。
 彼女が幼稚園時代のある日、父は唐突に、繁盛する理髪店をたたみ、唄者への道に専念する。

 父は、まだ3歳だった妹に三板を持たせてステージに立たせる。これがとてもかわいいというので大ウケし、これを機にいつしか父、兄、妹がファミリーグループ「糸満ヤカラーズ」として活躍するようになった。
 知子はというと、父には音楽のセンスが芳しくないとみえたのか、いつも祖母、乳飲み子の弟とともに留守番を仰せつかることに。
 母もステージの裏方を手伝う必要がありいつも不在のため、知子は寂しかった。

 「私もがんばって練習すれば、両親や兄弟といっしょにいられるのではないか」
 そう考えた知子は、打楽器を手始めにステージに必要な様々な芸を磨く。
 手ほどきをした父も感心するくらいにみるみる彼女は上達した。
 はじめの楽器はボンゴだった。座って叩くのではなく、これを首から提げて叩きながら踊る知子は一躍人気者になった。
 気がつけば、父はバックに専念し、彼女が前面に出てのステージスタイルが定着していく。

 父長幸は、2004年に他界。
 母は、父が大切にしていた三線を形見として知子に託す。
 知子はその三線を手元に置き、時々弾いてみる。すると、父から教わったあの唄、ヤカラーズで演奏したこの唄が甦ってくる。もう20年以上も前に覚えた唄なのに、まるで昨日まで弾いていたかのように自然に・・・。
 夫の照屋林賢に聴かせると、これは記録しておこうということになり、収録したのが、2009年1月に発表した「多幸山」である。

 林賢は、「父長幸の唄々を記録しようと何度か説得したが、よい返事をもらえないまま実現できなかった。ならば父の遺志を継ぐ知子の民謡はどうしても録っておく必要がある」と語っている。

 そんな知子を、まだ若者だった林賢は、りんけんバンドのボーカルとしてどうしても欲しかった。
 林賢が彼女の歌声を初めて聴いたのは、彼女がまだ高校生のときだった。
 超人気だった糸満ヤカラーズから彼女を引き抜くのは容易なことではない。結果、彼女が移籍してくれるまで8年もかかったという。
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 著者は1959年名護生まれ。20代には東京で演劇などに関わり、冷戦が終焉する90年代初頭に名護に戻り、地域計画や市役所の広報をつくる仕事をしながら、結婚して子宝にも恵まれます。
 そして、子どもたちのため、地域のために働いていた矢先、名護市への新基地建設の話が火の粉のように降りかかってきます。
 「子どもたちに米軍の新しい基地をプレゼントしてはならない」
 そう考えた著者は、請われるままに新基地建設の是非を問う住民投票の代表を引き受け、積極的に「政治」にコミットしていくことになります。

 1997年の市民投票では建設反対が過半数を上回ったものの、その後の市長選挙では容認派の市長が誕生し、市民の本音と建前が入り混じった複雑な様相を呈していきます。
 そのような中で著者は、国のなりふり構わぬ権謀術数を目の当たりにし、我々は国策を前にして何をしても無力なのか、そして憲法に位置づけられた「地方自治の本旨」とは何なのかについて、悩み、反発していくことになります。

 本書は、そのような10年を著者が振り返り、その経験の意味と内容を反芻しながら現在を考えるというエッセイ集です。
 「ラプソディ」とは、叙事的で民族的な内容を持つ自由な形式の楽曲のこと。そんな表題どおり、自由な形式で、沖縄の多様で複雑な姿が伝わってくる1冊です。

 そのようなコンセプトで政治的な問題について展開していく、という取り組み姿勢は共感できるのですが、個人的な意見としては、残念ながら、背景の政治的、時事的な問題が重すぎ、それをサラリと書こうとするところにやや無理があったような印象がありました。
 こういう問題は、やはり新聞記者などがやるようにまず淡々と事実を述べ、それをどういう立場からどう考えるか、というように、整頓された書棚の本を1冊1冊読み込んでいくように論じていくほうが、読者に伝わるものが多いと思います。
 琉球フェスティバル‘09東京が9月20日に日比谷野音で開催されることが決まりましたが、大阪についても概要が固まったようです。

 開催日  2009年10月17日(土)
 時間   開演 14:00  開場 13:00
 会場   大阪城音楽堂

 むむ、昨年と同じ大阪城野音か。

 出演者は次のとおり。

  神谷幸一  大工哲弘  古謝美佐子  我如古より子  玉城一美  ジョニー宜野湾
  大島保克  下地勇  中村瑞希  吉原まりか  いなむぬスリー  成底ゆう子
  沖縄かりゆし会  琉鼓会  琉ゆう会  他

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 おぉ、今回のメインは神谷だな。玉城一美とのコンビでコザの民謡酒場「花ぬ島」を大阪で再現するという趣向か。
 大工、古謝、我如古は東京とのダブル出場。

 古謝、我如古、玉城が揃い踏みする、というのが今回のひとつの目玉。
 昔々、世界を席巻したYMO(イエローマジックオーケストラ)のメンバーである坂本龍一のワールドツアーで、この3人がバックコーラスを担当して注目を集めた、という歴史がある。これが時空を超え、大阪で再現されるワケだ。

 奄美からはマリカ&ミズキ。期待度高し。
 成底ゆう子は、石垣島出身のシンガー。ピアノを弾きながらうたう「真っ赤なデイゴの咲く小径」にはヤラレタ経験がある。
 おなじみ、大島、下地も出場。
 いなむぬスリーってナンダ? DA PUMPの宮良忍なんかも参加しているらしいぞ。

 パーシャクラブやチナサダオ・バンドなど重厚な音を出すグループは少ないが、いろんなセッションが楽しめそうな今回の琉フェス大阪。楽しみですね!

 主催はH.I.P.大阪。東京と同様、こちらも雨天決行です。
 チケット一般発売は6月27日から。
 指定席6,000円、芝生自由席5,500円とのことです。
     oki-ritou45.gif   americano.gif

 またも沖縄関連本の買いだめ。今回は以下の7冊です。

 1 歴史のはざまを読む        紙屋敦之    榕樹書林         1050
 2 戦後沖縄の政治家たち       仲本安一    琉球新報社        1000
 3 南の島の甲子園           下川裕治    双葉文庫          620
 4 アメリカのパイを買って帰ろう   駒沢敏器    日本経済新聞出版社  1785
 5 沖縄の離島45            伊藤麻由子   オレンジページ     1575
 6 まれびとたちの沖縄        与那原恵     小学館新書        777
 7 奄美女(をなぐ)の伝承歌     吉田良子     三一書房         1995

 1は、薩摩支配下の琉球王国の実像を東アジア通商関係の中に位置づけた入門書。最近この筋の本をよく読んでいる。
 2は、大山朝常、屋良朝苗など12人の個性的な政治家の、人物評とエピソード。興味深い。
 3は、このたび文庫化なったので、ようやくゲット。
 4は、沖縄とアメリカが互いに手を取り合って生きていた一時期を、逸話の地平線上に浮かび上がらせたルポルタージュ(かな?)。
 5は、「食」をめぐって歩いた沖縄45の有人島の様子を写真と文章で。てぃだの光あふれる写真が美しい。
 6は、ノンフィクションライターよなはらけいさんの刺激的な日本/琉球・沖縄論。
 7は、追い求めて久しい1冊。やっとゲットです。

 このほかにもシーナの文庫本を2冊。

 いやはや、大量の沖縄本のストック。
 こんなに買って一体どうするというの?


 著者は、奄美から本土への、いわば移住“2世”。奄美のことは、奄美に住む叔父から聞いたことぐらいしかわからないのに、「血」がそうさせるのか、頻繁に瀬戸内町の古仁屋へと赴き、秀三さんの家に上がりこみ、黒糖焼酎を飲みながら、幾多の島ばなしを聴き耽ることになります。

 本書は、秀三さんをはじめとする奄美ゆかりの人々によって語られる、シマ唄の掛け合いの文化や奄美で盛んな相撲、戦後混乱期の伝説的人物マジアニ、性や死に関する話などの、奄美の魂を形作るさまざまなエピソードをベースに、奄美文化を深く探究していく一冊です。

「僕は自分にとって一つのテーマがくっきりと描き出されたことがわかった。そのテーマとは何か? …奄美の文化は根本的に口承・口伝の文化である。そのことが孕む意味、それを僕は考えてみたい。そこから引き出せることを全て引き出してみたい。」――と、著者は語っています。

 章立ては、「口承の文化」、「根源からの文化、すなわち性」、「相撲と神」、「掛け合いの魂-シマ唄の世界」、「マジアニ伝説」、「祖先からの呼びかけ-里力さんの宇宙」、「小学校の記憶」、「出島・留島・帰島」。
 いずれも奄美に対する著者の思い入れがたっぷり。

 奄美にはニライ・カナイ信仰が根底にありますが、里さんにとっても、秀三さんにとっても、義永秀親さんにとっても・・・(この本に登場する、奄美を語る人々)、おそらくは一つの伝説にまで高められた「奄美」こそが、つねに彼らのニライ・カナイだったのだなぁということに、読んでいて気づくことになります。

 著者は、1949年大阪生まれの大学の哲学のセンセイ。だからかどうか、妙にもってまわった言い方だなぁと感じられるところが何箇所かあったものの、全体としてはよく推敲がなされたいい文章だと思います。
 凝った文章というものは、好き嫌いが出る恐れがある反面、ハマってしまえば美麗と受け止められることもありますからね。