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 沖縄の芸能に関するさまざまな文献に触れていて、「辻遊郭」の存在が沖縄の諸芸の発展に与えた影響がとても大きかったことがわかってきました。

 那覇市の東側、波乃上宮に隣接するこの地帯は、今では多少哀愁すら感じさせるディープな歓楽街となっているのですが、かつては女性たちが町のすべてを仕切っていた一大遊郭街となっていたそうなのですね。

 遊郭というと、私たちヤマトの現代人は春をひさぐ淫猥な女性たちや、非合法な雰囲気、男尊女卑的な男女間の力関係などを連想してしまいますが、どうも沖縄の辻の場合、実態はそうばかりでもなかったようです。

 辻に売られていく農村の女たち、という経済的背景こそあったものの、辻でジュリ(尾類)となって芸を磨き、美貌を身につけ、働き、生活する女性たちは、ある種の誇りを感じていたとも言われています。

 そんな辻の様子をもっと知りたくなって、古書店(アマゾン)から「辻の華・戦後篇」(上原栄子著、時事通信社刊)を入手しました。1989年の発刊。まだ買えて、よかった!

 旧正月のジュリ馬行列が復活されるなど、辻文化が見直されつつある一面もあるようですが、むかしの沖縄や、現在までうたい継がれている沖縄民謡などの真髄を理解するためには、かつて独特の文化で栄華を極めていた辻遊郭の実態をもっと深く知る必要がありそうです。

 この本の読後感は、また後ほど、ということで。
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2009.04.15 豚の三枚肉?


 おもしろい画像を見つけた。
 それは、<豚肉石>。(笑)

 湖北省武漢市で開催された「中華奇石展」で、豚の三枚肉そっくりの玉石が多数登場し、話題となっている――とのこと。
 これはまたヒジョーにリアル。「ママー、今晩のおかずはラフテーだね」。(笑)

 これをうまそうとみるか、それとも、う~ん胸焼けがしそうとみるかで、見た人の年齢がわかろうというもの。
 ちなみに私は、後者です。


 すでにこの世にいないひと、遠い土地に暮らし、もう会うこともないであろうひとたち。彼らが生きた時間、場所、語った言葉、表情、しぐさ、そのひとつひとつがあざやかによみがえる。かけがえのない旅とひとの記憶を綴る、珠玉のエッセイ集です。

 とりわけ「壺屋のおばちゃん」は秀逸。
 新宿の鳴子坂下で小さな沖縄料理店を「壺屋」をつづけていた大嶺ヨシ子おばちゃん。著者がすでに他界している母の名を告げると、おばちゃんはその母を知っていて、なつかしさのあまり泣き崩れます。そして、その母の叔父とおばちゃんの兄はともに画家で、長い親交を結んでいたことがわかり・・・。
 話は女学校時代の古きよき那覇に及びますが、そんな夢のような日々は沖縄戦によって失われ・・・。
 人々の、そういう小さな出会いや、かすかに残っている若い頃の日々の記憶というものが、生きていくうえでどれだけ力になっているか、ということがしみじみと伝わってきます。

 ほかに、「さざ波のウチナーグチ」、「うつくしき奄美」、「竹富島(テードゥン)物語」、「桜坂今昔物語」、「調布飛行場の掩体壕を見に行く」など。
 題材はトカラ列島から八重山まで幅広く、琉球弧に関心を持つ者にとっては垂涎のエッセイとなっています。

 さらには、「時の旅人」として、藤田嗣治、火野葦平、岡本太郎、鯨岡由美子(古波蔵保好の妻)、岩崎卓爾(八重山気象台長)、柳田國男など、沖縄に縁の深い人物の紹介などもあり、興味深いことこの上なしです。

 個人的にほほ~と思ったのは、沖縄でシーカヤックをやっている知名進という人の紹介のところで、この人の兄がオーディオ界で著名な「知名オーディオ」の社長で、さらにアコースティックMの知名勝がその弟にあたる、ということ。みんな兄弟なのですね。沖縄も世間が狭いです。(笑)
 人というのは、いろんなところで、いろんな形でつながっているのですね。

 ストレスなく読めるうえに、小分けに読んでも前後の脈絡はしっかりとつながるほど印象深い内容。
 しかも血脈、血縁、地縁という深い部分である種不思議な感動を覚えることができる、というように、エンターテイメント性の高い秀作でした。


 私はまだ読んでいないのですが、著者の前作に「目からウロコの琉球・沖縄史」というのがあって、琉球王国時代の歴史上のエピソード満載で紹介しているそうなのですが、こちらの本はその“最新歴史ビジュアル”版という位置づけのよう。
 およそ400~700年前の沖縄の古琉球の時代が図解・イラストで紹介されています。このイラストも著者の手によるものです。

 表紙をめくるといきなり登場するのが「大図解・これが古琉球のイメージだ」というカラー見開き。
 そこには琉装、カタカシラ姿の男性、亀甲墓、赤瓦の建物、三線や三枚肉、中国風のジャンク船などが、フツーに考えればむかしの沖縄とはこんな感じかというように描かれています。
 ところが、その見開きを裏返すと、「大図解・これがリアル古琉球だ!」と、資料を限りなく忠実に再現・視覚化した絵が描かれています。
 それはというと、今風のものとはまったく似ていない斜めカタカシラに日本刀をさげた男性、仏教式の墓碑、深く浸透していた仏教、盛んだったヤマトの芸能などの様子が描かれていて、アラまぁ不思議、といった趣。
 一般的なイメージとは違っているはずであることは理論的にはわかっていても、このようにビジュアルなものとして比べてみると、あっちゃあ、こんな感じだったのかぁと、ホント、目からウロコです。

 世界遺産になった5つのグスクの当時の様子を絵に描いて見せ、当時の間切の状況を地図にプロットしてみせ、王府の組織を図解し・・・と、多角的に説明してくれますから、読んでいてとても楽しいし、ためになります。
 文字は何にも勝る優れた記憶装置であると強く思っているのですが、こういうのを読むと、なにもそんなに文字一辺倒でなくてもいいんじゃないの、べつに――と思えてきますね。(笑)

 このような図説のほかに、32編の「目からウロコの琉球史」も。
 「クニの頭とシマの尻」、「首里城にある「書」のヒミツ」、「琉球の「親方」の話」、「解いてみよう!王国の試験問題」、「赤瓦カッコワルイ」、「琉球王国の蒸気船」など。これらも固くない表現でなかなかフムフムもの。

 著者の紹介が遅れましたが、1976年生まれの法政大学沖縄文化研究所国内研究員の方です。おぉ、法政大。沖縄学研究の一大拠点ですね。外間守善センセイのお弟子さんでしょうか。

 なお、この本のつづきは、著者の運営するブログ「目からウロコの琉球・沖縄史」で読むことができるようですよ。