FC2ブログ


 「沖縄」がブームとなって絶好調だった21世紀初頭に編まれた、沖縄に関する何でもアリの「事典」。
 「日本で沖縄ほど多彩な自然、文化をもっている地方は少ない。本書はその沖縄の魅力をウチナンチュー(沖縄現地の人)が取材、執筆、編集したチャンプルー事典。ガイドあり、写真あり読み物あり、どこから読んでも見ても、きっと元気をもらえて楽しくなるハズ。」

 書店の棚でよく目立つ表紙のため、発売当時(2001年)には何度か手にして買おうかどうか考えました。しかしその当時はすでに沖縄の深みにどっぷりとはまってしまっていたので、沖縄のスタンダードを集大成した優等生的な出来上がりのこの本は買わずに過ぎてしまったのでした。
 あれから10数年が経ち、ネット古書店に送料込み258円で出ていたので、買って読んでみました。

 巻頭に沖縄をイメージさせる南国的な写真が載っており、これは垂水健吾によるもの。
 嘉手川学は編者であり、執筆者は嘉手川本人のほか仲村清司、長嶺哲哉、小浜司、平良竜次、當間早志、真喜屋力、上里隆史、高宮城実人、津波信一、おりべ・えりあなど44人が名を連ねていて極めて重厚。山と渓谷社が社命を賭けて(?)本腰で臨んでいる様子が窺えます。
 そのためか版を重ねて、手元のものは第4刷版となっており、時間の経過とともに多少の追記も行われているようです。

 文字は小さくびっしり。一方できれいな写真は大きいものを多用してグラフィカルなページもあり、この好対照も読んでいて楽しい。
 カテゴリーを文化、食、自然、暮らし、素顔、民俗の6つに分けて詳述。これ1冊で沖縄の大要がつかめます。
 でもまあ、発行から18年が経過しているので、流行の先端部分などについて古く感じるところがあるのはやむを得ません。過去を振り返る温かい気持ちで読みましょう。

スポンサーサイト
  19noharu.gif  suzukaze.gif

okihoumatsu.gif  okishikitari.gif  okinoseichi.gif

okibun100.gif  okishimajima.gif  okinosenzen.gif

awamoricant.gif  koregaokidesu.gif  soulfood.gif

 2019年1月から3月にかけて買った本は、購入順に次の21冊です。

1 地球上の全人類と全アリンコの重さは同じらしい。  椎名誠 角川文庫 201809 820
2 短編伝説 旅路はるか  集英社文庫編集部 集英社文庫 201712 古570
3 居酒屋へ行こう。  太田和彦 ポプラ新書 201812 古664
4 愛しの街場中華「東京B級グルメ放浪記」2  鈴木隆祐 光文社知恵の森文庫 201510 古589
5 満腹どんぶりアンソロジー お~い、丼  ちくま文庫編集部  ちくま文庫 201702 古356
6 唐船ドーイ  中川陽介 沖縄タイムス社 201902 864
7 一九の春  中川陽介 沖縄タイムス社 201902 864
8 涼風布工房  高浪千裕 沖縄タイムス社 201902 864
9 沖縄の戦前の教育  濱元朝雄 沖縄タイムス社 201902 1296
10 沖縄<泡沫候補>バトルロイヤル  宮原ジェフリー ボーダー新書 201902 1296
11 沖縄しきたり歳時記増補改訂  稲福政斉 ボーダー新書 201902 1296
12 沖縄文学の一〇〇年  仲程昌徳 ボーダーインク 201810 1620
13 沖縄の聖地 御嶽: 神社の起源を問う  岡谷公二 平凡社 201902 864
14 泡盛カンタービレ!ヴァイオリニストの沖縄文化論 長嶺安一 ボーダーインク 201809 1512
15 オキナワ島々の物語  喜舎場直子 文芸社 201812 648
16 沖縄が好きな人へ…「これが沖縄です」  新垣治男 フーガブックス 201703 古408
17 東京ワンデイスキマ旅  カベルナリア吉田 彩流社 201311 古516
18 ニッポン定食紀行  今柊二 竹書房文庫 201102 古460
19 味なメニュー  平松洋子 新潮文庫 201811 古503
20 日本全国ソウルフードを食べにいく  飯窪敏彦 文春文庫 201510 古505
21 アンソロジー カレーライス! ! 大盛り  杉田淳子 ちくま文庫 201809 古539

 いずれも楽天ブックスとAmazonから。地元の書店に赴いて買うということはほとんどなくなった。
 このうち10冊は古書(=Amazon)。主にこれまでに発行されてきたグルメ本を狙ってみたところ。
 また、沖縄関係本は全体の11冊と半数強を占めています。沖縄県内出版社のものが多く、それらの地方出版物は古書市場では流通しにくいため、新刊で買うしかないという事情があります。今回入手した沖縄本の多くは、新書、文庫の薄手のものが多いです。買っておかないと読みたいときに手に入らないので。
 あ、20にも沖縄のソウルフードが載っているから12冊かな。

 今年の4月からはこれまでよりも時間が自由になるはずなので、読書量を増やして読み進めていきたいと思っています。



 「ふたりきりになれるところへ行きます?」
 清楚な女将の言葉に、蒲生は耳を疑った。……
 サラリーマン人生の先が見えた58歳蒲生は、ひょんなことから妻と離れ離れで沖縄に住むことになってしまった。ある夜、暖簾をくぐった小料理屋で、彼を迎えたのは涼やかな四十路の女将雪江。枯れはてたと自認していた蒲生に夢のときが訪れつつあった。しかし、その夢の先には……。
 ――という、回春官能書下し。

 官能小説を買って読んだのは、実は初めてのことになります。これを買ったのも、まあ、設定が「沖縄」だから。
 何もそこまでして沖縄本を読み漁らなくてもいいような気はしていますが。

 で、どうだったかというと、そそるような表題のわりには、ペーソス感や笑えるところもあったりして、読んでいて楽でした。このジャンルの小説であるからこそ、そちらの方面一辺倒では読み続けるのが苦しくなるものなのかもしれません。
 また、「ああああっ」とか「ぅんんんっ」とか「おおおおっ」などのセリフが多過ぎ。これもこのジャンルでは効果的な手法として使われるのでしょう。

 正直言って、性格も見た目も普通のいい齢の男が、偶然に出会った妙齢で超美人とそういう関係になるなどということは現実的にはありうべくもないと確信できる筋立て。もしかしたら自分も…などという気にはこれっぽっちもなれません。

 沖縄関連では、那覇の繁華街松山の猥雑さ、辻のホテル街、恩納村の高級リゾートホテルなどが登場しますが、いずれもここといった場所の特定性はなく、沖縄らしい風景、言葉、習俗などはほとんど登場しませんでした。

 ところで著者は、2010年に日本官能文庫大賞(そーゆー賞があるのか)を受賞した最も旬の官能作家なのだそう。1967年東京生まれで日本大学芸術学部中退。04年に「ふしだら天使」で登場するや、濃密な濡れ場と巧みな物語構成でたちまち読者の支持を獲得、雑誌新聞連載でも大活躍中、とのことです。



 「沖縄・座間味島「集団自決」の新しい証言」との副題が付く、「集団自決」が日本軍の強制であったか否かを考える上で問題となる1冊です。

 沖縄戦の開戦直後、慶良間諸島に駐屯した軍の強制の下、肉親どうしで手をかけ、600人を超える住民が命を断った「集団自決」。
 本書は、その「集団自決」から生き残った祖父母と母(初枝)をもつ著者が、「母の手記」を原点に、30年をかけて聞き取った住民の証言で構成したノンフィクションです。
 ところが、その「母の手記」を証拠として、慶良間を基地とした海上特攻隊の元隊長らが、自分は「自決」命令は下していないとして、「沖縄ノート」の著者・大江健三郎氏と発行元の岩波書店を「名誉毀損」で告訴。文部科学省もそれを受け、歴史教科書の検定で、軍による「集団自決」への関与・強制の記述を削除させました。
 そんな中で「集団自決」の体験者が重い口を開き、新たな証言を語り出した。 ――というもの。

 第4部「母・初枝の遺言」の記述はインパクトあり。
 初枝は1962年、「家の光」の体験実話の懸賞に応募し、「3月25日夕刻、梅沢部隊長(少佐)から、住民は男女を問わず、軍の戦闘に協力し、老人と子どもは全員、今夜忠魂碑前において玉砕すべし、という命令があった」と記述しました。
 原稿をまとめるにあたり「自決命令」についてどう記述するかずいぶん悩んだとはいえ、集団自決で障害を負った人や遺族にはすでに国から年金や給与金が支給されていることを考慮して、(隊長命令はなかったという正しい)証言をすることができなかった。――と記されています。

 また、1980年には梅沢氏を探し当て、初枝は「命令したのは梅沢さんではありません」と伝えます。するとはじめのうちは「ありがとう」と嗚咽していた梅沢氏でしたが、その後には自分の無罪を主張し、「座間味島の集団自決の命令者は助役だ」として態度を硬化させていきます。
 このあたりは、真実を言えない苦悩や自己保身など、壮絶な人間模様が読み取れるものとなっていました。

 こういう本を読むにつけ、その場に置かれた住民たちの絶望感ばかりが浮き上がります。大事なのは、誰がどのように命令したのかということよりも、国家からの強制感はみんなが感じていたという疑いのない事実のほうだということです。そうだろ、国。



 「ある中小企業経営者の喜びと悲しみ」との副題がつく自分史。
 徳之島出身者の一代記であれば読んでみようかと、2004年発行のものを2017年に古書店から購入したものです。
 著者は1934年生まれ。ということは、古希を契機に当書をしたため、今は84歳。毎年「四国88か所行脚」をし、毎朝のWEBチェックをするなどし、周囲の人たちはその元気さにほとほと感服している様子です。
 徳之島から沖縄を経て単身上京、喫茶店ボーイから商社マンまでさまざまな苦難を乗り越え、1968年に独立し、額縁、絵画製造販売会社を創業。

 カバー袖に書かれていた、「潮風」編集主幹水野修氏の発刊に寄せる文章から一部を抜粋して以下に記載しておきます。

 雪山渥美さんが私共の主宰する雑誌「潮風」に、6回にわたって寄稿していただいた玉稿が1冊にまとめられたこと、まずは「おめでとう」とお祝い申し上げずにはいられない。
 「自分史」といえば、鼻持ちならない自慢話だと相場が決まっているのだが、そういう既成概念は雪山さんの文章には当てはまらない。まず驚かされることは、少年期の思い出から企業経営のトップとしてく実践現場の描写に至るまで、微塵の文体の崩れも感じられず、一貫して無欲恬淡の境地で書き進めている点である。そういう姿勢が文学的な完成度のマイナス面をはねのけて、嫌みを感じさせない不思議な魅力を醸しているのであろう。
 ・・・敗戦後間もなく、父の仕事の失敗から先祖譲りの土地や家屋敷を売り払い一家そろって、米軍政下の沖縄へ引き揚げて行かねばならなかったことや、母の死に直面しても日本本土と沖縄は自由に行き来できなかった歴史事実、そして妻女との出会いや暑いトタン屋根の仕事部屋で乳飲み子を守りながら夫雪山さんの仕事に協力した妻女の姿等など、いずれフィクションを織り込めば、読み物としての文学的な高鳴りを醸すであろうが、雪山さんは意識的にそれを避けたのだと読み取れる。
 庶民史の傑作と評したい。

 ――ということで、読んでいて、自分は人生に成功した、充実しきっていたと感じている人は、一代記や半生記といったものを書きたくなるのだろうなと思ったところ。
 我が身を振り返れば、これまでが成功した人生だとは捉えていないし、それなりにテレンコでやってきたので、他人に自分の過去を伝えよう、誇示しようなどとは露も思わない。それよりも、誰かから評価してもらおうなどとは考えず、無名の人間の一人としてその時々に思ったことを脈絡なく、自分にとってだけ何らかの価値がある文章を書いていくほうが、肩が凝らず、責任もなく、いいのではないかと思っている。



 先に読んだ「沖縄幻視行」(連合出版、2012)に続く沖縄モノで、今回は多良間島。著者は、前著執筆時に知った「淡水レンズ」という言葉をきっかけに多良間島に興味を抱き、5年以上かけて島を取材したそうで、その成果としてまとめられたのがこの本です。
 多良間島の特徴であるトゥブリが、澄みきった青空とともに表紙を飾っています。

 多良間島というひとつの島をここまでじっくりと見詰めて詳述した本はほかに知りません。おそらく採算度外視で出版に踏み切った関係者には深甚なる敬意と大きな拍手を送りたい。
 島の人々や雰囲気、祭祀スツウプナカと八月踊りなどについて、内面的な想いを含めて記されており、多良間独特の選挙の様子やタラマフツ(多良間方言)などについての記載も。
 多良間島を知るのにとても参考になるとともに、読み応えや読後感もしっかりたものがありました。

 沖縄文化の原型を保存する島――。
 琉球弧の西の端、多良間島。東西6km、南北4km、人口1,185人。この小さな島には、神と交わる壮大な祭祀が受け継がれてきた。それを絶やさないで継承して行こうとする島の人々の意志には確かなものがある。
 しかし、急速に進む人口減少と高齢化および周辺海域の緊張の高まりは、この島に深刻な問題を投げかけている。
 著者は、島の最大の神事に参加し人々の思いを受け止め、文化継承の道を提言する。(連合出版ホームページから)

 章立ては、前後に「プロローグ」と「旅のあとで」を配し、その間に「島の散歩」、「スツウプナカの祭祀」、「八月踊り」、「多良間の生と死」、「歴史の中の多良間」の5章。

 「宮古新報」のホームページに、著作の紹介が載っていたので、以下に紹介しておきます。

・波田野直樹さんが「多良間島幻視行」を発行  2018/03/10 配信
 【多良間】 波田野直樹さんがこのほど「多良間島幻視行」を発行した。波田野さんにとっては前作「沖縄幻視行」に続いて沖縄をテーマとした2冊目の著書。
 波田野さんと多良間島との出会いは2011年で、「沖縄幻視行」の執筆中に淡水レンズのある島、風水集落の残る島として訪れ、以来6年間にわたって多良間の風土や住民たちと付き合ってきた。
 波田野さんは「観光的にそれほど知られてなく、どちらかと言えば地味な土地柄だが、そこに生きる歴史、文化、そして共同体の姿は鮮烈な印象を残した。その体験を余すところなく描いたのが本書」と述べている。
 波田野直樹(はたのなおき) 1948年東京生まれ。ウェブサイト「アンコール遺跡群フォトギャラリー」主宰。主な著書は「アンコール遺跡を楽しむ」(03年)、「アンコール文明への旅、キリング・フィールドへの旅」(07年)、「沖縄幻視行」(12年)、「多良間幻視行」(18年)。